今月20日は「世界子どもの日」でした。子どもを権利の主体と定めた「子どもの権利条約」の採択を記念して制定されました。虐待や自殺、貧困や戦争など、世界中の子どもたちは様々な問題に直面しています。同条約を日本が批准してから30年が経過した今、子どもの権利保護のために何ができるのでしょうか。考え直す必要があります。
◾︎「子どもの権利条約」と意見の尊重
同条約は「児童の権利に関する条約」とも言われ、196の国と地域が締結した取り決めです。第1条で、子どもは「18歳未満のすべての者」と定義されています。
基本的な考えとして、また、権利実現への原則として、以下の4項目が示されています。
①差別の禁止
②子どもの最善の利益
③生命、生存及び発達に対する権利
④子どもの意見の尊重
中でも、子どもの声を真剣に受け止めることは重要です。受けた苦痛を子ども自身で解消することは、簡単なことではありません。それどころか、自身の権利が侵害されていることを自覚することさえ困難です。そこで、子どもの相談・救済機関として第三者機関を設置することが求められています。
◾︎子どもの声を聞く第三者機関
子どもの権利保障のために活動する第三者機関は、日本国内で少しずつ増えており、設置自治体は約50に上ります。
名古屋市の条例に基づく第三者機関「市子どもの権利相談室なごもっか」では23年度、418件の相談がありました。学校や家庭、勉強や健康の話など内容は幅広く、必要に応じて調査・勧告・提言もします。市立高校体育館で窓ガラス落下事故が発生した際には、早急な対応を求める高校生の相談をきっかけに、再発を防止する工事が実現しました。
しかし、人員不足や認知度の低さなど、課題は山積しています。しかも自治体で実現できる措置は限られているため、国レベルでの第三者機関「子どもコミッショナー」の設置を求める意見も多くあります。
◾︎締約国として、今後の取り組み
子どもの権利をめぐり、前進した部分ももちろんあります。法改正により、児童ポルノの単純所持が処罰対象となり、親の子供に対する「懲戒権」が民法から削除されました。
同条約の締結国は5年ごとに、「国連子どもの権利委員会」に取り組みを報告することが求められています。また同委員会は、各国による条約の実施状況についてモニタリングと助言を行なっています。
2019年の勧告で日本は、婚外子や障害のある子への差別、子どもの意見の尊重、体罰をめぐる状況などについて改善を求められました。弱い立場であることの多い子どもの権利を保障するために、勧告に真摯に向き合っていく必要があります。
誰もが幸福を感じることのできる社会を、多くの人が望んでいることでしょう。幼少期に感じた苦痛や疑問は、長年残り続けます。だからこそ、人格を形成する子ども時代を尊重することが何よりも大切なのです。子どもでなくなった私たちの課題は、彼らを権利主体として尊重していくことなのではないでしょうか。
参考記事:
・11月20日付 朝日新聞 朝刊2面 「子どもの権利 意識低い日本」
・11月20日付 朝日新聞 朝刊9面 「子どもの命 教育を 紛争が奪う」
・11月20日付 朝日新聞 朝刊27面 「子どもの声聞く 行政を動かす」
参考資料
・日本ユニセフ協会「子どもの権利条約」 https://www.unicef.or.jp/crc/
・法務省「よくわかる! こどもの権利条約」 https://www.moj.go.jp/content/001392920.pdf