10月末から11月上旬にかけて、我々の生活に大きな影響を与える重要な選挙が続きました。日本の衆議院議員総選挙とアメリカの大統領選挙です。結果は与党の過半数割れと前職の返り咲き。波乱に満ちた「選挙イヤー」を象徴する形となりました。
◯自公過半数割れ、少数与党に
先月27日投開票の衆院選では、与党の議席が215議席に留まり、公示前の279議席から64議席減らしました。
11日召集の特別国会で自民党の石破茂総裁が首相に指名され、自公政権は存続することになりましたが、与党の議席は過半数(233議席)に届いておらず、法案や予算案の可決には一部の野党が賛成に回る必要があります。
こうした状況では、与党ペースで法律を成立させることが難しくなるのは避けられません。法案の通過率が大きく低下すれば、機動的な政策の実施が困難になる可能性があります。
衆院での与党過半数割れという特殊な状況であるからこそ、各党には垣根を超えた対話を通じ、建設的な合意形成を重ねていくことが求められます。
◯前職の返り咲き
5日投開票が行われた米大統領選挙では、共和党のトランプ前大統領が民主党のハリス副大統領に圧勝しました。
共和党は同時に行われた連邦議会選挙でも勝利し、大統領職と上下両院の過半数を占める「トリプルレッド」となりました。トランプ氏は自身が掲げてきた政策を実現しやすくなると見られています。関税の引き上げや同盟国に国防費の負担増を求める彼の主張は日本にも大きな影響を与えます。来年以降、新たな米国の動向を注視する必要があります。
2期目を迎えるトランプ氏は、側近を忠臣で固め、政敵への「報復」をも辞さない構えであると報じられています。選挙結果の確定作業が長時間に及び、投票結果をめぐる混乱や対立が生じるという事態は避けられましたが、米国内の分断が一層深刻化するのではないかとの懸念は消えません。
◯世界はポスト「選挙イヤー」へ
11月も下旬に差し掛かり、空前の「選挙イヤー」は終わりを迎えようとしています。多くの国々で大統領選や議会選が行われましたが、結果としては先進国を中心に与党の苦戦や政権交代が相次ぐことになりました。
7月のフランス国民議会選挙では大統領派が大幅に議席を減らし、イギリスでは14年ぶりの政権交代が実現しました。
米大統領選直後にはドイツでショルツ首相率いる連立政権が崩壊し、来年2月に総選挙が実施される見通しとなりました。
先進国を中心に各国の政局は流動化しています。「選挙イヤー」の余波は収まる気配もなく、関心は早くも来年以降の国内外の情勢に向かいつつあります。
参考記事:
日経電子版「トランプ人事、報復の脅し 司法省・軍「解体」いとわず」(2024年11月15日)
日経電子版「米共和「トリプルレッド」 トランプ政策、実現に弾み」(2024年11月14日)
日経電子版「ドイツ総選挙、ショルツ与党に逆風 25年2月実施で合意」(2024年11月13日)
日経電子版「少数与党の予算審議 立民委員長、日程や進行で主導権」(2024年11月13日)
11月12日付 読売新聞朝刊1面「第2次石破内閣発足 30年ぶり少数与党」
11月7日付 朝日新聞朝刊1面「米大統領にトランプ氏 「米国第一」再び 経済・移民 不満の受け皿」
日経電子版「衆院選全議席確定、自民191・立民148 政権枠組み探る」(2024年10月27日(28日更新))
参考資料