昨日、人生で初めて坐禅を組みました。京都では坐禅体験ができる寺社は複数ありますが、今回は京都市東山区にある建仁寺 両足院(けんにんじ りょうそくいん)に行ってきました。
一口に坐禅体験と言っても、寺社やプログラムによって違いがあります。筆者は10月に別のお寺で座禅をしようと思ったのですが、朝6時30分から、それも家から40分はかかる場所での開催ということで、集合時間に行き着くことができませんでした。それでも以前から坐禅に興味を持っていたので、リベンジを果たしました。
今回は、両足院での坐禅のみの体験です。8時30分からの会に参加しました。定員は50名ほどで、志納料は一人2000円、時間は90分です。内容は坐禅の説明、坐禅、法話、自由時間です。他にも、坐禅とそうじ体験(茶礼あり)、坐禅と茶礼と庭園散策、坐禅体験2nd STEP、3rd STEPのコースがあります。全体の参加人数は30名ほどで、外国からの観光客の姿も見られました。そのため、説明は日本語と英語で行われます。
90分のプログラムでは、まず坐禅の説明、足の組み方から教えてもらいます。いくつか組み方はあるのですが、初心者なのでそこまで足に負荷がかからないものにしました。僧侶の方が、体全体を木だと思ってくださいと言っていました。組んだ足とおへそは木の幹、土台で、どしっと構えます。上半身は枝葉のイメージで、体を揺らし、空気と一体になる感覚を覚えます。瞼は閉じるのではなく下ろすイメージで、ものの影や存在はなんとなくは感じる程度です。
全体の坐禅は3回に分かれており、時間は徐々に長くなっていきます。1、2回目はどちらも10分以内、3回目は15分ほどでした。その間には休憩があり、足を伸ばすことができます。初心者であっても心地よい足の痺れを感じ、坐禅に親しむことができました。坐禅とは動きを我慢することだと思っていましたが、そうではなく自己と外との境界をなくし、全てを受け流して一体となることなのだと知りました。
1回目の坐禅では外部の音や空気に感性を研ぎ澄ますように言われます。2回目は自己の内部を感じます。呼吸やお腹や内臓の動き、その全てから、今ここに自分があることを感じました。3回目はそのどちらも感じ、自己と外との境界がなく、一体となるような境地へ誘われます。
3回目では僧侶が棒を持って周り、叩いて欲しい人は胸の前で手のひらを合わせて待ちます。自分の目の前に僧侶が来た気配を感じ取ると、一例し、おへそを見るように丸まり、上半身を軽く倒します。そうすると僧侶が左右の肩を2回ずつ叩きます。
なんとなくのイメージとして、坐禅中に少しでも動いた人が叩かれている光景が浮かぶ人もいるかもしれません。今回はそのようなことは一切なく、自分で希望した人が叩いてもらうというものでした。それも痛いというよりは心地よく、スッキリしたというのが率直な感想です。
筆者撮影:両足院 坐禅体験が行われた場所(2024年11月15日)
全3ターンの坐禅が終了した後、複数回体験したことがある人が「今日は違うお香使っていますか」と質問していました。それに対して「バレない程度にミストを振っていました」との答えが返ってきました。僧侶がそっと加えたミストの香りにも気づけるほど、外との繋がりを感じていたのだなと思いました。
読売新聞の記事でも、夜中までスマートフォンを利用しているため睡眠不足に陥り、学習意欲が低下したり、心身疾患を招いたりしていることが指摘されています。スマートフォンで仮想空間に長時間浸ることは、健全とは言えません。五感を通じて得られる体験が減っている現代だからこそ、坐禅をすることに意味があると思います。
両足院ではアクセサリーは外してから、スマートフォンの電源は切ってから参加するように言われます。強制的にスマートフォンと距離を置く時間を取ることで、五感、全身隅々で感じられることがあります。日経新聞の記事でも、坐禅に集中するとある時から空っぽになる、すると新しい情報が入ってくるようになり、日々リフレッシュして生きられると書かれていました。
僧侶は終わった後、「普段、顔に蚊が止まると痒みを感じたり、邪魔な存在に思えたりして手で取り払ってしまう。でも坐禅中だとそうはいかない。足が痺れたからといって勝手にほぐすことはできない。だから全てを受け入れて流していく、今ここにあるものに対して無になれる」と語っていました。
何もしないことを競う「TOKYOぼーっとする大会2024」というものが開催されるほど、無は注目を集めています。様々な情報が入ってくる現代だからこそ、無になる時間には自身をリセットすることができるという価値があるのだと思います。朝、空気を入れ替えて白湯を飲み、ストレッチをしたり瞑想したりするだけでも心身との向き合い方が変わるとも体験の中で聞きました。皆さんも日常の中に無の心を取り入れてみませんか。
参考記事:
5月5日付 読売新聞朝刊(大阪13版)3面 「五感を高める体験を大切に」
参考資料:
日本経済新聞電子版 「『空っぽ』からの 前田工繊社長・前田尚宏」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC119310R10C24A4000000/
日本経済新聞電子版 「『何もしない』を大切に 90分ぼーっとする大会、勝者は」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC039CE0T01C24A0000000/
両足院 「坐禅体験 京都建仁寺塔頭両足院」https://ryosokuin.com/zazen/