電話が苦手な若者 ―変わるコミュニケーションのかたち

「電話が苦手」。いきなり携帯電話に着信が来て、用件がわからないと不安に…。

若い世代の間でよく聞く声です。私も飲食店に電話で予約をする際、正確に予約が伝わっているのか、当日までドキドキしてしまいます。食べログなどインターネットサイトでは予約後に詳細が記載されるため安心で、電話予約のみのお店を避けてしまいます。

電話取り次ぎサービスを提供するソフツーは、昨年、20歳以上の男女を対象にした調査を実施しました。「電話に対して苦手意識を感じていますか」という設問に対して「とても感じる」「やや感じる」と回答したのは全体の約6割と、多くの人が電話によるコミュニケーションに苦手意識を感じていると言えます。さらに、20歳代に限ると4分の3にあたる74.8%に跳ね上がります。

ソフトバンクが今年2月に行った「電話とテキストコミュニケーションに関する調査」でも、10歳代・20歳代の若者のうち約4割が「電話が苦手」と回答しているようです。先の調査の7割超にはおよびませんが、いずれからも若い世代には電話に対する苦手意識が確認できます。

なぜ若い人たちが電話に対して不安を抱いたり、恐怖心を持ったりするのでしょうか。まず考えられるのは通話経験の減少でしょう。総務省の「通信利用動向調査」によれば、スマートフォンを保有している世帯は、2021年時点で90%超。一方で固定電話を保有する世帯は、63.9%と13年の79.1%から大きく減少していることがわかります。

このようにハード面で電話が減少し、さらに通話機会も減少しています。総務省情報通信政策研究所の報告書では、携帯電話の平均利用時間(休日)は7.3分とされています。ソーシャルメディアの平均利用時間は115分で、その差は歴然です。

【図1】総務省情報通信政策研究所「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」、54頁。

【図1】にあるように平均利用時間が『平日、休日ともに「ソーシャルメディア利用」及び「メール利用」が長い傾向』にあり、テキスト(文字)を基礎としたサービスが主流であることがわかります。そのため、普段から接することの少ない「通話」に対して、特に若い世代が不安に駆られてしまうのは、一般論としてありうると思います。

ただし、ライン(LINE)などでは、例えば「既読がついても返信が遅い」などリアルタイムのコミュニケーションに弱点もありました。通話は嫌だけど、リアルタイムで意思疎通を図りたい。そうした潜在的な需要に応えたのがJiffcy(ジフシー)というアプリです。電話のようにコミュニケーションを取りたい相手を呼び出したうえでテキストメッセージを送り合うことができます。

テキスト通話という新しい形式を採用している。
株式会社穴熊「テキスト通話アプリ『Jiffcy』、日経トレンディ「2025年ヒット予測ベスト100」にて第10位に選出」

このアプリは、日経トレンディ「2025年ヒット予測ベスト100」で10位に選ばれています。手紙から通話へ。通話からメールへ。メールからSNSヘ。コミュニケーションのかたちが変化することに伴って、ツールも変わってきています。

しかし、新たな手段が登場しても、「相手を思いやりながら、適切な意思疎通を図ること」。こうしたコミュニケーションの基本原理が覆ることはないでしょう。基本に立ち返りながら、時代時代のコミュニケーションをとっていきたいと思います。

<参考文献>

株式会社ソフツー「若者世代は7割以上が「電話恐怖症」に!?ソフツー「電話業務に関する実態調査」を発表」

ソフトバンク株式会社「電話が苦手なだけで、その人のことは嫌いじゃない!そんな若者を応援する「#電話が苦手です」プロジェクト始動 若者の約8割が電話よりもテキストミュニケーションを優先したいと回答。」

総務省「令和4年通信利用動向調査の結果」

総務省情報通信政策研究所「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書」

日経電子版『「SNSは親友のみ」Z世代で再び ゲームや動画、体験共有』2024年10月29日配信

株式会社穴熊「テキスト通話アプリ『Jiffcy』、日経トレンディ「2025年ヒット予測ベスト100」にて第10位に選出」