スペイン東部バレンシア州や南部で10月下旬、記録的な豪雨による洪水が発生しました。スペインメディアによると、9日時点で洪水による死者は少なくとも214人、行方不明者は41人に上ります。
特に甚大な被害を受けたバレンシア州では9日、当局の対応の遅れに抗議する大規模なデモが行われ、約13万人が参加しました。早期に警報を出さなかった上に、被災者への支援が大きく遅れたことを非難し、カルロス・マソン州首相の辞任を要求しました。ソーシャルメディア上では、昨年バレンシア緊急部隊(UVE)を解散したことも強く批判されています。
バレンシア州に留学した筆者が、デモが起きると知ったのは5日です。知人の大学生らが、デモ実行の知らせをインスタグラム上でシェアしていたためです。5日時点で、約1.6万ものアカウントによって拡散されていました。知らせには、デモの日時・場所、「マソン、辞任しろ」というメッセージがバレンシア語で書かれています。誰でも簡単に情報を発信・共有できるというソーシャルメディアの特性が生かされた結果、より多くの市民をデモに巻き込むことに成功しました。加えて、ソーシャルメディアを利用する多くの若者にも容易にメッセージを届けることができました。
インスタグラム上でシェアされていたデモ実行の知らせ(11月5日)
ソーシャルメディアは、抗議活動の拡大だけでなく災害の復興支援にも役立てられています。ウェブデザインを行う民間企業2社が、非営利で「Buscador DANA」というウェブサイトを立ち上げました。インターネットの情報の海を泳ぐことなく、必要とする支援の情報に簡単にアクセスすることが可能です。また、ボランティアに参加するための情報も示されています。このオンライン・プラットフォームの概要もインスタグラム上でシェアされています。
インスタグラム上でシェアされているオンライン・プラットフォームの概要(11月11日)
このようなスペインの事例から、ソーシャルメディアが人々を連帯し、地域社会にインパクトを与えるための有効なツールであることを理解できます。災害時に、ソーシャルメディア上で虚偽の情報が流されるといったネガティブな一面もあります。しかし、上手に利用すれば、社会に重要なメッセージを伝えたり、災害の復興支援を加速させたりすることができます。ソーシャルメディアの可能性を生かすも殺すも、私たち次第なのです。
参考記事: