「深夜に猫探し」――これはアルバイトのマッチングアプリ「タイミー」に掲載されていた求人です。そんな一風変わったバイトが本当にあるのか、と思わず目を疑った人も多いのではないでしょうか。しかし、ただの冗談では済まされない話でした。
求人内容には、「指定された道を通り、猫を見つけて地図上で印をつけるだけ」と記載され、時給2千円と深夜割増手当が提示されていました。さらに、「情報漏洩防止のため、携帯電話や荷物を預かります」とも書かれていました。この求人が、闇バイトで強盗する家探しにしか見えないと指摘する内容がX(旧ツイッター)で拡散され、最終的に7千万回以上表示される事態に。急遽求人が差し止められることとなりました。
(11月9日付 朝日新聞デジタルより Xで拡散された投稿)
最近、若者を巻き込んだ「闇バイト」による犯罪が急増しており、大きな社会問題となっています。通信アプリやSNSを通じて実行役を募集し、次々と強盗事件を起こしているのです。求人内容は一見魅力的で、「高収入」や「即日払い」といった言葉で生活が苦しい若者を引き寄せています。しかし、その背後に犯罪に巻き込まれる危険性がひそんでいるかもしれないことを忘れてはいけません。
朝日新聞によると、最近もSNSを通じて強盗を指示したグループが摘発され、指示役は30を超えるアカウントを使い分けていました。このように、犯罪グループの手口はどんどん巧妙になっており、警察の捜査をかいくぐるための手段が次々と登場しています。
(11月5日付 朝日新聞デジタルより 首都圏で相次ぐ強盗事件など)
多くの犯罪グループは「シグナル」という通信アプリを使用しています。匿名性と暗号化機能が特徴で、メッセージの内容が暗号化され、一定期間後に自動で消去される仕組みが組み込まれています。このため、捜査当局はその証拠を手に入れることができず、指示役を追跡するのが非常に難しくなっています。
闇バイトの恐ろしいところは、一度関与してしまうと抜け出すのが極めて難しい点です。応募の際に免許証や住民票の画像を送ってしまったことで、相手から「家族を監視している」「個人情報をネットにさらす」などと脅され、辞めたくても辞められなくなってしまうケースが増えています。また、実行役として関与した若者たちは、金銭目的で強盗や詐欺に加担しますが、最終的には十分な報酬を得ることなく使い捨てられ、逮捕されているのが現実です。たとえ実刑は免れても犯罪歴が一生残り、その後の社会復帰はかなり難しくなります。闇バイトは若者たちの未来を一瞬で奪う凶暴さを秘めており、その影響は計り知れません。
アルバイトのマッチングアプリやSNSの運営企業は、求人内容に対する監視体制を強化すべきです。犯罪に繋がる求人が掲載されないよう、厳密なチェックと早期発見に努めることが重要だと考えます。また、私たち一人ひとりが、闇バイトを見極める力を養い、その危険性やリスクを十分に認識することも大切です。
インターネットやSNSが誰でも利用できる現代だからこそ、情報リテラシーを高め、特に若者たちが犯罪に巻き込まれないよう、教育現場での情報リテラシー教育を強化すべきです。そして魅力的な条件を示す求人の裏に、犯罪の罠が隠れている現実を私たちはもっと自覚しなければなりません。
参考記事:
10月28日付 朝日デジタル「連続強盗で使われる『シグナル』とは 暗号化、自動消去」
11月5日付 朝日デジタル「強盗の実行役次々逮捕も見えぬ指示役 通信アプリでアカウント30超」
11月9日付 朝日デジタル「『深夜に猫探し』闇バイト? タイミー『不適切な疑い』求人差し止め」
11月9日付 朝日デジタル「『闇バイト加担しないで』県警が中学生に講演会 啓発動画も公開」