次の学習指導要領改訂に向けた会議が年内に開かれます。話し合いの場は文部科学省に置かれた中央教育審議会です。現在の大学生は2008年に改訂された学習指導要領に沿った教育を受けて来ました。今までに7回改訂された学習指導要領にはどのような違いがあるのでしょうか。調べてみました。
学習指導要領は戦後約10年ごとに改訂されてきました。47年、58年、69年、77年、89年、98年、2008年の7回です。
47年は戦後の民主主義社会を担う市民を育成するために、子どもの生活経験をベースにした教育が重視されました。各学校が単元を編成するための「手引き」という位置づけでした。また、今の社会科という科目はこの頃に生まれました。
58年の改訂では47年の「手引き」から「教育課程の基準」と位置づけはより明確になりました。また47年が教科横断的だったのに対して、教科ごとの系統的な学習が推奨されました。このタイミングで道徳の授業も始まります。
69年には教育が現代化されたと言われます。背景となったのは冷戦で、国際的な科学技術競争が展開されていました。世界を目指した先端的な学習を進めた反面、授業についていけない学業不振児も目立つ結果となります。そのため、職業準備のための商業学校や工業学校が普及しました。
そして77年からは筆者も耳にしたことがある「ゆとりカリキュラム」の時代です。高度経済成長もひと段落し、今までの急ぎすぎた教育の問題点に目が向けられました。そして、「人間性の育成」に重点が置かれていきます。授業時間数も削減されました。
しかし、「ゆとり」を目指したはずが80年代はいじめや荒れる学校がピークを迎えました。原因は「ゆとり」というのが表面上の指針に過ぎなかったからです。現実には成績の良い生徒が評価され、大学受験も詰め込みの学習をしなければなりませんでした。その反省を踏まえて改訂されたのが89年です。知識や技能以上に「関心・意欲・態度」を重視する新しい学力観でした。
その次の98年は「生きる力」「自ら学び、考える力」がテーマとなりました。教科横断的な学習を進めるために「総合的な学習」が新設されました。しかし、学力低下が懸念され2008年に改訂されます。授業時間数が増加し、「活用する能力」と「知識技能」のバランスが取れた教育が目指されました。
現在、高校では「情報Ⅰ」が必修科目となっています。そして来年1月には大学入学共通テストに導入されます。筆者が高校に通っていた時は「情報Ⅰ」という科目はありませんでした。情報化に伴い教育方法も変化していくと改めて実感しました。改訂が目前となった新学習指導要領にも注目しています。
参考記事:
10月5日付 朝日新聞デジタル 学習指導要領「詰め込みすぎでは」 改訂を前に研究者ら、課題を議論(https://www.asahi.com/articles/ASSB424D6SB4UTIL00ZM.html)
10月24日付 読売新聞オンライン 平日も「部活動改革」、地域クラブや複数校の合同部活の定着目指す…「地域移行」は改称(https://www.yomiuri.co.jp/sports/etc/20241023-OYT1T50171/)