昨今、推し活という言葉を耳にします。「推し」と言われてもピンと来るものがない、という人も少なくないかもしれません。では、推し活の定義はどんなものでしょうか。
おし‐かつ【推し活】
自分の好きな芸能人やスポーツ選手、キャラクターなどを応援する活動の総称
(デジタル大辞泉より)
このように考えると、好きなヒトやモノ、対象は何であれ何かを応援する活動は推し活と呼べるのかもしれません。応援のためにスポーツ観戦に行く、大好きなバンドのライブに出向く、気になる作家の展覧会に行く。いわゆる「推し活」といえば、アイドルを応援するというイメージが先行してしまいがちですが、その対象は幅広く定義出来ます。このように考えると、多くの人が「推し活」に夢中になっているといえないでしょうか。
そして、「推し活」のなかでは、大きく感情を揺さぶられる場面に出会うことがあるでしょう。好きなヒトやモノに出会う度、熱中して何かを応援する度、筆舌に尽くし難い感情を抱いた経験がきっとあるはずです。感動するゴールに立ち会えた。ライブで好きな曲が披露された。自分の嗜好に合う作品と出会えた。そんな時、あなたはどんな言葉を口にしますか?
「やばい!」
その一言で片付けていないでしょうか。恥ずかしながら、私には、思い当たる節がいくつもあります。好きなアイドルのライブに行った感想を伝える時、感動した映画の話をする時。考えるときりがありませんが、「やばい!」「やばすぎ!」と、口に出してしまいがちです。日常生活でも、友人からそのような言葉を聞くことがしばしば。とりわけ、同世代にはその傾向が強いように感じています。
では、何がどうやばいのでしょうか。「やばい」と一言で片付けるのではなく、違った言葉が発せられたら、きっと好きなことを語ることはもっと楽しくなるはずです。「推し活」をより楽しむために。「やばい!」しかでてこないあなたに、『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』を読むことをおすすめします。
16万部を突破した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者、三宅香帆さんによる同書。「やばい」と一言で片付けるのではなく、思うままに言語化するためのポイントについて知ることが出来ます。
本書を読んで、私も多くの気づきを得ました。以来、意識していることがあります。それは、ありきたりな表現を避けることです。本書から教わったことの1つでもあります。「最高」「考えさせられた」など、自分の思考を巡らせることなく、簡単に使える言葉は「やばい」以外にもたくさんあります。自分は何をどう感じたのか、どのように思ったのか、手あかのついた表現で言葉にするのではなく、自分の言葉で語ろうと意識するようになりました。どこが良かったのか、何が心に残ったのか。自分が感じたことを細かく伝えるように心がけています。
「やばい」しかでてこないあなたへ。本書が、感じたことを思うままに言葉にする一助となるかもしれません。
参考記事:
26日付 朝日新聞朝刊(総合)2面「賃上げ、消費惜しまぬ若者 人手不足、他世代より恩恵大きく 外車を購入・海外旅行へ」
30日付 日経新聞朝刊17面「物価高でも「推し活」熱く 余暇市場、昨年13%増71兆円」
参考資料:
三宅香帆『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカバー携書、2024)