今月27日、第50回衆議院議員選挙の投開票が行われました。自民党・公明党の過半数(233議席)割れは、民主党政権が誕生した2009年衆院選以来15年ぶり。目標議席を「自公で過半数」としていた石破茂首相(自民党総裁)の責任が問われる事態となりました。
今回の選挙結果で注目した点はいくつもあります。自民党の裏金問題が選挙に与えた影響や公明党党首の落選、野党の獲得議席数大幅増加、最高裁判事の国民審査での罷免率の上昇など。しかし筆者は、選挙権に関心を持ちました。
1966年に起きた静岡県一家殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さんの選挙権は、44年ぶりに回復しました。袴田さんは死刑が確定した80年に選挙権が失われていました。公職選挙法の規定で、禁錮以上の刑に処せられている者はその執行を終えるまで、選挙権が失効するからです。本稿では、当たり前のように感じている選挙権について考えていきます。
選挙権には、必ず備えていなければならない条件(積極的要件)と、ひとつでも当てはまれば選挙権を失う条件(消極的要件)があります。
◾︎積極的要件
積極的要件は選挙の種類により異なりますが、共通する条件は「日本国民で満18歳以上であること」です。(公職選挙法第9条1項)
2015年6月、公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し公布されました。これに伴い16年、選挙年齢が「満20歳以上」から「満18歳以上」に引き下げられました。
◾︎消極的要件
選挙権を失う条件は以下の5つです。(公職選挙法第11条)
1.禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
2.禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)
3.公職にある間に犯した収賄罪により刑に処せられ、実刑期間経過後5年間(被選挙権は10年間)を経過しない者。または刑の執行猶予中の者
4.選挙に関する犯罪で禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者。公職選挙法等に定める選挙に関する犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている者
5.政治資金規正法に定める犯罪により選挙権、 被選挙権が停止されている者
袴田さんは1つ目「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」に該当し、選挙権を失っていました。
◾︎日本国外における選挙権
国立国会図書館の調査(2014年)によると、海外における選挙権年齢は「18歳以上」が主流です。世界191の国・地域のうち9割近くが日本の衆議院に当たる下院の選挙権年齢を「18歳以上」と定めています。
22年7月の参院選当時、筆者は未成年であり、今回が初めての国政選挙となりました。家族や大学の友人と選挙と政治について話し合い、有権者としての自覚が強くなる。そんな機会になりました。
大学の講義を通して法律だけでなく政治についても学んでいますが、政治を学ぶことは法律を学ぶこと以上に複雑だと感じていました。しかし、自らの考えと似た政策を掲げる政党を応援することに楽しみを感じたり、ニュースアプリの当選確定の速報にドキドキしたりしました。議論が行き詰っていた同性婚や選択的夫婦別姓が動き始めるかもしれないという期待が大きかったからなのかもしれません。政治や選挙は複雑で難しいけれど、面白い。そんな軽い気持ちで政治を考えることも、悪いことではないのかもしれません。
参考記事
・10月30日付 日経電子版 「自民・公明、国民民主と『103万円の壁』協議 経済対策」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA29CT40Z21C24A0000000/
・10月28日付 朝日新聞 朝刊 1面 「自公 過半数割れ」
・10月28日付 日経新聞 朝刊 1面 「自公 過半数割れ」
・10月28日付 読売新聞 朝刊 1面 「与党過半数割れ」
・10月25日付 日経電子版 「袴田巌さん、44年ぶり選挙権回復で期日前投票」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE257A10V21C24A0000000/
・10月25日付 NHK 「袴田巌さんが衆院選の期日前投票 選挙権44年ぶり回復で」 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241025/k10014619221000.html
参考資料
・国立国会図書館 調査及び立法考査局 「諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢(最終閲覧:10月30日) https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9578222_po_077907.pdf?contentNo=
・総務省 「選挙権と被選挙権」(最終閲覧:10月30日)https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo02.html
・参議院法制局 「選挙権年齢 ー選挙期日との関係ー」(最終閲覧:10月30日) https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column105.htm