サードプレイス〜居場所の多様性〜

今月29日に閣議決定された自殺対策白書によると、去年1年間に自殺した人の数は2万1837人で、そのうちの513人が子ども(18歳までの者)であることが分かりました。前年は2万1881人となっており、44人減少してはいますが、まだまだ自殺を選んでしまう人は多いという悲しい現状があります。また、時期についても8月後半から増加し、夏休みが明ける9月1日が最も多くなっているとされ、学校が始まるタイミングで命を絶ってしまう例が多くなっています。

2009年以降の子どもの自殺の原因や動機としては、小学生では「家庭問題」、中学生では「学校問題」、高校生では男性が「学校問題」、女性は「健康問題」の割合が高くなっているそうです。

子どもたちが毎日通う学校が苦しさを抱える環境になってしまっていることも多いのです。思春期を迎え、些細なことでも敏感にストレスを感じやすい子どもにとっては、必ずしも学校が好ましい環境とは限りません。

心の負担を取り除くためには、家庭や学校だけではなく、地域全体で支援していくことが必要だと政府は指摘しています。そこで近年注目を集めつつあるのが、サードプレイスです。

これは、家庭や職場(学校)などとは異なり居心地が良くリラックスできる場所のことを指します。子ども家庭庁の発表によると、「学校や家庭以外にここに居たいと感じる居場所がありますか」というアンケートに、はいと答えた学生や生徒、児童は全体の6割ほどを占めます。

図1「家や学校以外にここに居たいと感じる居場所がありますか」(子ども家庭庁参照)

学校以外の居場所の具体例としては、以下の通りです。

図2「年齢別、居場所と感じている場」(子ども家庭庁参照)

データを見ると、祖父母や親戚、友達の家や習い事、公園などの数値が高いことが分かります。また、近年はオンライン空間を居場所と捉える子どもも多くなっています。

インターネットの普及により、いつでもどこでも人と繋がれるようになったからこそ、目にしたくない情報や学校での人間関係に疲れてしまう子どもは増えています。そういった事情から、居場所作りの必要性は高まってきていると考えられます。

自分の居場所の選択肢が多ければ多いほど、好む場所で過ごすことができ、また過ごしたくない環境を避けることができます。学校に行かない生徒や児童が増えている中で、家族や学校の先生には打ち明けられない悩みを抱えている子どもも少なくはありません。サードプレイスは、ストレスから解き放たれる場所であり、自分を見つめ直せる場所、自分が関わりたい人たちと関われる場所なのです。

また、サードプレイスの一例として挙げられる子ども食堂の数も近年は増えてきています。

こども食堂の支援を通じて、誰もとりこぼさない社会の実現を目指して活動する「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京都渋谷区、理事長:湯浅誠)は、「こども食堂全国箇所数調査」の2023年度速報値を発表しました。2018年から続いている調査です。この発表によると、昨年度から1768箇所増え、全国に9131箇所の子ども食堂があることがわかりました。

図3「子ども食堂の推移」(むすびえ参照)

子ども食堂のように、学校や家庭以外での環境=居場所を地域の中で整備していくことで、少しずつ子どもたちのストレスは解消されていくと筆者は考えます。

心安らぐ居場所があることで、頑張る気力を養える子どもも多くいるはずです。より多くの子どもたちが豊かにのびのびと生活を送るためにも、今後ますますサードプレイスの必要性は高まるでしょう。そのため、教育機関や地域が連携して整えていくことが求められます。

一人ひとりが自分にとって居心地のいい場所を確保できる社会になることを願っています。

参考文献
・コエテコ サードプレイスとは?〜子どもに学校・家庭以外の”もうひとつの居場所”を〜

・むすびえ こども食堂の数、全国の公立中学校数とほぼ並ぶ「9,131箇所」に増加 ~2023年度こども食堂全国箇所数調査結果を発表~(2023年12月速報値)

 

参考記事
・朝日新聞デジタル 2023/7/25付 高校生が考えた「図書館で不登校を防ぐ」 教室は息苦しいときもある

・朝日新聞デジタル 2024/10/30付 はるな愛さんとつながるシングルマザー その磁力は地域をつなぐ

・NHK 2024/10/29付 自殺対策白書 “子ども孤立させないよう地域全体の支援必要