その情報、本物? 身近に潜む「偽情報」

最近、情報の取捨選択が難しいと感じます。先日、日本ファクトチェックセンターの投稿で「最高裁の国民審査は〇か×を記入する」という誤った情報が訂正されているのを見かけました。本当かわからない情報がSNSにあふれていることを再認識しました。

11月5日に行われるアメリカ大統領選挙では、多くの陰謀論や偽情報が流布されているのが現状です。9月にはトランプ氏がオハイオ州の街で不法移民がペットを食べていると根拠のない主張を展開しました。

朝日新聞の連載「アメリカ大統領選2024 混迷を歩く」は、陰謀論にはまった人々の現状を報じています。普通の人が陰謀論にはまり、自分の主張に反する人を敵とみなしてしまう姿は痛々しく映りました。米ブルッキングス研究所のエレイン・カマーク氏は、偽情報を広める人の狙いを「多くの場合は何かを売ろうとしている」と言います。

陰謀論は、嘘の情報に真実を混ぜることで本当らしく見えるという厄介な代物です。しかし、「自分は大丈夫」だと思っている人も多いのではないでしょうか。筆者もその一人でした。大学でメディア社会学を専攻しており、メディアリテラシーの授業も受けていたからです。

しかし、さまざまなメディアが伝える情報については、「私は踊らされないが、世の中の多くの人はメディアに誘導されたり、だまされたりしているだろう」と考える「第三者効果」という傾向があるといいます。秦正樹氏の『陰謀論』では、「『私だって陰謀論に騙されるかもしれない』と考えておくこともまた、ユーザー1人ひとりができる対策として有効である」と述べられています。

ブラジルでは9月、最高裁判所が偽情報の拡散を理由に、X(旧Twitter)のサービス停止を承認しました。偽情報やヘイトスピーチが拡散されているとしてコンテンツの削除を要求していましたが、X側が応じなかったそうです。その後Xがアカウントの規制に応じるなどして、10月にサービス再開が認められました。ブラジルでは右派の間でXがよく使われていたことから、大規模な停止命令に抗議するデモも行われたそうです。

日経新聞によると、11月3、4日に日本で初めて「ハッカソン」が開かれるそうです。ハッカソンとは「エンジニアやデザイナー、プログラマーなどが集まり、集中的に新しいサービスやシステムを開発するイベント」だといいます。このハッカソンではエンジニアらが対策システムの開発を競うそうです。こうした動きにも注目しています。

これらを考えると、Xを含めSNSは政治において重要な存在と言って過言ではないでしょう。だからこそ正しい情報を得るには、情報を鵜吞みにせず、新聞などチェックされたマスメディアの情報と見比べるなど、工夫が必要です。利用者の心構えだけではなく、プラットフォーム側の対策も必須でしょう。うまくSNSと付き合いつつ、情報の真偽にアンテナを張っていたいものです。

 

参考記事

24日付朝日新聞朝刊 国際面「ガレージ生活、引き込まれた陰謀論」

26日付朝日新聞朝刊 国際面「分断広げ醜さを誇張 拡散加速の悪循環」

参考文献

日経電子版「偽情報対策「ハッカソン」で磨く 台湾は拡散に刑事罰」

日経電子版「ブラジル「X停止」が描く波紋 偽情報が分断あおる」

NHK「ブラジル最高裁判所 Xのサービス再開を認める決定」

日本ファクトチェックセンター「最高裁の国民審査は○か×を記入する制度? 〇を書くと無効票【ファクトチェック】」

秦正樹「陰謀論」(中公新書、2022年)