旅先で本と出会う 「読書離れ」が進む今

旅行などで少し遠出をしたときは、その土地で本を購入するようにしています。高校生のときに一人で遠方に訪れたことがあったのですが、帰りの機内で時間を潰すために空港の本屋で1冊の本を買ったことがきっかけです。いつもとは違うブックカバーに心躍らせたことや、考えすぎてしまう頭の中をスッキリとさせてくれたことを覚えています。

この経験もあり、大学に入ってからは本に費やす時間を増やすようにしていました。バイトや課題をする合間に、通学時間を利用して本を読むことが多いです。入学当初は図書館を利用し、本にお金をかけることは多くなかったのですが、去年頃から「本にかけるお金は惜しまない」という自分ルールを設けています。しかし、最近は大学や就職活動などで時間をかけて本を読むことが再び減ってきています。

最近よく耳にするのが「読書離れ」です。読売新聞によると、スマートフォンやSNSの普及で紙の活字に触れる機会が減り、雑誌や漫画の購入で定期的に書店を訪れる人も減っているといいます。文化庁が発表した「国語に関する世論調査」ではスマホやゲーム機など「情報機器で時間が取られる」と答えた人が43.6%で最多。年齢別でみると、10代・20代は約7割を占めています。全体で38.9%に留まった「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」は、30代から50代が他の世代より高い6割台となっています。

スマートフォンの動画やSNSの文章は短く、深く考えなくても楽しむことができます。筆者も通学中に本を読むよう心掛けていますが、ついメッセージのやり取りに夢中になり、気がつけば電車を降りる時間になってしまうことが多々あります。調査結果からも分かるように、若者世代で「情報機器に時間を取られる」という傾向が強いのは、無料で情報やエンタメに触れられるようになったうえ、そちらの方がタイパやコスパが良いと感じることが要因なのではないでしょうか。

そんな中でも旅先で本を手に入れるワクワク感を思い出し、筆者がこの習慣を再開したのは今年の夏休みです。在来線を使って旅行をしていたとき、帰りの電車までの時間を潰すために立ち寄った本屋で、気になっていたエッセイと、偶然目に入った小説を購入しました。先日も東京に行く用事があり、帰りの新幹線で読む本を買いました。

本を読みだすと世の中の喧騒から離れ、ゆったりと旅の疲れを癒すことができます。特に旅先の書店では、その土地ならではの本や、旅行の思い出になる1冊に出会えることもあるでしょう。その土地で購入した本を読むことで旅の思い出を振り返ることができる点も気に入っています。

ふと手に取った本が、思わぬ発見や感動をもたらしてくれることがあります。そんな出会いを求めて、たまには本屋を訪れる時間を作ってみるのも良いかもしれません。

 

参考記事:

7日付 日本経済新聞「[社説]見つめ直したい読書の意義 」

4日付 読売新聞朝刊(東京14版)1面「書店振興へ課題まとめ 経産省概要 読書離れ、雑誌販売減、手数料…」

朝日新聞デジタル「本を読まない人が6割超 スマホに時間とられる? 国語世論調査」

参考資料:

文化庁 令和5年度「国語に関する世論調査」の結果の概要