熊本県にも工場を構えるTSMC 私たちに身近な半導体の進化を辿る

近年日本では半導体不足が話題になっています。2023年8月2日から無記名式ICカードの発行が一時中止されるなど、私たちの生活にも影響がでています。そこで半導体の仕組みや役割を学ぶためにTSMC本社に付設されているTSMC創新館を訪れました。

TSMC創新館(9月2日、筆者撮影)

 

TSMC創新館は台湾の新竹市に16年12月5日に開館し、入館料は無料となっています。台北駅から台湾高速鉄道などの公共交通機関を利用して約1時間。この地区は多くの半導体メーカーが集まっていることから台湾のシリコンバレーと呼ばれています。創新館では団体で来ている見学者もいて、同館の関係者によると毎年1000人以上が訪れるといいます。

 

入館すると予約に合わせたガイド方法で案内してくれます。筆者は日本語の音声ガイドを予約しましたが、ガイドの機器を借りる際にパスポートを預けるように指示がありました。機器が壊されてしまったときや紛失してしまったときのために預かっているとのことです。

 

半導体は私たちの生活と深く関わっています。身近に使用しているスマートフォンやパソコン、スマートウォッチ、VRゴーグルなど至る所に使われています。パソコンにはPCグラフィックチップ、無線LANチップなどが搭載されており、このうちPCグラフィックチップは処理された画像を画面に映し出します。また、無線LANチップは物理的な障壁に阻まれない通信環境を実現しています。

 

半導体の進歩について、レーシングゲームなどで過去と比較できる体験コーナーがありました。こうしたゲームにはグラフィックプロフェッサーという半導体が使われています。1997年、2007年、22年それぞれのゲーム画面を比べるだけで飛躍的な進化を実感することができます。他にも暗闇での撮影に関係する半導体の進歩を5つの年代を比較して学べます。

展示の様子(9月2日、筆者撮影)

技術の説明に続いて、TSMC建設に関わる重要な資料が展示されています。ここでは1985年の台湾政府へのプレゼンテーション、86年の投資家向けビジネスプランの資料があり、会社建設までの過程を学ぶことができます。

最後の展示ではTSMCの創設者である張忠謀(モリス・チャン)博士の生い立ちが描かれていました。

TSMC本社(9月2日、筆者撮影)

 

日本では、熊本県でTSMC工場の建設が22年4月に始まり、24年2月24日に開所式がありました。その影響を館内のスタッフに聞いてみると「熊本県に工場の建設が始まってから、日本人の来場者数は増えています」と話し、日本からの関心が高まっていることが分かりました。

 

興味深い展示ばかりで80分という時間もあっという間に過ぎてしまいました。今回の訪問で、いかに私たちの生活を半導体が支え、なくてはならない存在だということを改めて実感しました。次の機会には熊本工場にも足を運び、半導体への関心を持ち続けようと思います。

 

参考文献:日経電子版 2024年2月22日付 TSMC工場完成 変わる熊本、シリコンアイランド復興へ

https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00009090X00C24A2000000/

 

参考資料:台積創新館ホームページ

https://www.tsmcmoi.com/ch/