「9月を目処に」勧奨高まるワクチン接種 ジェンダーを超えて考える感染症リスクとは

先日、HPVの予防接種をしてきました。HPVとは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスを指します。

現在は、1997年から2007年度生まれの女性を対象に、無料で予防接種が受けられる「キャッチアップ接種」が実施されています。無料で予防接種を受けられる措置の期限は来年の3月に迫っています。自費で打つと数万〜10万円ほどはかかる費用が公費で全額負担されています。

13年4月には小学校6年〜高校1年相当の女性を対象に、予防接種法に基づき無料で受けられる定期接種となっていましたが、接種後の体の疼痛や運動障害などを訴える声が相次いだことにより、厚生労働省は同年6月に接種の積極的な勧奨を中止しました。その後の研究で安全性が裏付けられ、22年4月から積極的な勧奨が再開されました。しかし、この間に定期接種の対象だった年代の接種率は落ち込んだとの報告があります。

前々から予防接種のお知らせは届いていたのですが、どこか勇気が出ず、病院へ行っていませんでした。しかし期限が迫っていると知り、急いで予約を取りました。

15歳以上の人は3回の接種が必要だと言われています。また、接種の間隔を数ヶ月空ける必要があり、3回目を終えるまでに約6ヶ月かかります。来年の3月に接種を完了するには9月末までに初回の接種をしておかなければならないと聞きました。朝日新聞の記事によると、対象者の半数がこの措置を知らないと答えており、呼びかけを強化しています。

HPVは200種類以上あり、15種類で子宮頸がんを引き起こすことが分かっています。ワクチンは子宮頸がんの原因になる種類のHPVの感染を防ぎます。9つの型のHPVに対応する9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPVの8〜9割を予防できるとされています。ワクチンにはいくつか種類があることを病院へ行って知り、筆者もこの9価ワクチンを接種してきました。

筋肉注射ということで緊張していたのですが、病院の方の温かい声掛けにより、無事接種することができました。同じ目的で病院を訪れていた人も見られました。一人ではないという安心感も得られたように思います。

接種前にはパンフレットを用いて説明を受けたこともあり、緊張が和らぎました。初回の接種が9月末ということで、2回目は11月末まで、3回目は3月末までと先のスケジュールも示してもらえました。

発熱、めまい、ふらつきなどの副作用を起こす場合もあるため、接種後30分間は待合室で待機していました。接種から3日経ちましたが、接種部の痛み以外に副作用は現れていません。

同世代の友人の中には接種をしたことがある人と、そうでない人どちらもいます。

立命館大学に通う3年生の女子学生にインタビューしました。彼女は未接種とのことで、「受けたいなとは思っているが、いつまでに受けないといけないかちゃんと分かっていなかった。ニュースで見た後遺症が怖かったので、あまり前向きな気持ちになれなかった。でも受けたいと思う」と言っています。先にも述べたような後遺症のことが気になり、接種を躊躇っている人も多いのではないでしょうか。

HPVワクチンは「子宮頸がん予防ワクチン」と呼ばれているため、女性のためのワクチンと思われる傾向にありますが、男性の中にも接種を希望する人はいます。男性のHPV感染予防は、性交渉時に女性に感染させる機会を減らし、子宮頸がん防止になると言われています。加えて、男性も尖圭コンジローマや咽頭がん、肛門がんといったHPV感染症のリスクを減らせることが確認されています。

海外では男性の接種も公費で助成する国があります。オーストラリアでは対象者の男女の8割が接種済みで、子宮頸がんの発症率は希少がんと同水準にまで減少しました。カナダ、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスでも男性は公費での接種対象であり、接種率も高いそうです。

同じ大学に通う辻渕豪士(20)さんは男性のHPVワクチン接種について、「リスクを下げられるのであれば接種したい。周りの人への感染リスクを減らせるのであれば受ける価値があるのではないか」と応じてくれました。

ワクチンに関しては様々な声があり、一概にどうなのか決めつけることは難しいように思います。女性だけの問題だと認識されてきましたが、ジェンダーを越え、社会全体で感染症問題について考えてみませんか。

参考資料:

朝日新聞デジタル 「HPVワクチン『キャッチアップ接種』、無料で終えるなら9月までに」https://digital.asahi.com/articles/ASS821G0DS82UTFL00JM.html?iref=pc_ss_date_article

朝日新聞デジタル 「HPVワクチン救済接種、低迷 子宮頸がん予防、97〜07年度生まれへの措置」https://digital.asahi.com/articles/DA3S16004696.html?iref=pc_ss_date_article

日本経済新聞デジタル 「HPVワクチンを男性にも 浜木珠恵氏」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD012SY0R00C23A5000000/