「100年フード」 あなたの地元にも?

工芸品や祭など、日本各地には有形、無形を問わず多くの文化が伝わっています。その一つが食文化です。そんな各地に残る食文化の継承やPRを目的に、文化庁は2021年度から「100年フード」という取り組みを進めています。

自治体や団体による応募制で、これまで250件の食文化が認定されています。筆者の地元である福岡・朝倉地域からは、「蒸し雑煮」と呼ばれる茶碗蒸しとお雑煮を掛け合わせた料理が認定されていました。以前から口にしていたものが地域の伝統食と知り、郷土への興味や愛着が沸いてきました。隣接する小郡市の鴨食文化も認定されていました。危機馴染みのない食文化でしたが、小郡市に住む知人に聞いても「知らなかった」と返ってきました。ほかにも近くに住んでいても、狭い範囲にとどまったままで一度も聞いたことがなかった食文化がいくつも認定されています。

知名度が低い文化が掘り起こされることで、地域の魅力創出や文化の継承に繋がる期待が膨らみます。この事業を機に、外の地域だけでなく、地元からの関心も高まるかもしれません。

認定条件は以下の3つです。

①地域の風土や歴史・風習の中で個性を活かしながら創意工夫され、育まれてきた地域特有の食文化(全国一律の食材や加工食品ではなく、地域に根差したストーリーを持つ食文化)

②地域において、世代を超えて受け継がれ、食されてきた食文化(単に一人、一店による料理ではなく、地域の広がりの中で、二世代以上に渡って継承され現存する食文化)

③その食文化を、地域の誇りとして、100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する食文化

ただ、認定先の一覧を覗くと、知名度の高い「ご当地グルメ」が掲載されていないことがわかります。これは、「100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する食文化」という条件に見られるように、保存運動が活発な食文化が多く申請され、認定される傾向にあるからだと考えられます。一方で、保存運動が必要ないほど根づいていたり、運動が活発ではなかったりする食文化は認定フードのリストから外れていることがわかります。そのため、各地の食文化を網羅しているとは言えない状況です。

筆者撮影:かんざらし(「100年フード」認定)・具雑煮(「農山漁村の郷土料理百選」選出)、具雑煮もえどじだいから続く伝統食だが、認定されていない。(2024年8月18日)

似たような取り組みは2007年にも実施されていましたが、趣旨が少し異なります。農林水産省が「農山漁村の郷土料理百選」として、地域の伝統的食文化を選定していたのです。パンフレットの初めに「農山漁村への関心を高めていただく機会となるよう」に選定したと書かれてあることから、食文化は地域活性化の起爆剤としての役割を期待されていることがわかります。

福岡でいえば、「農山漁村の郷土料理百選」に選出されている「水炊き」や「がめ煮」は「100年フード」としては認定されていません。ここからも「100年フード」事業は地域活性化という側面よりも、文化そのものの継承や保存が目的であることが考えられます。

インターネットで各地のマスメディアのニュースを調べてみると、記事や特集が組まれている様子がわかります。話題となれば、保存や消費がこれまで以上に活発になることが期待できます。また、旅先や地元で「100年フード」を探してみると、素敵な食との出会いがあるかもしれません。始まったばかりの事業が日常的に地域文化を認識するきっかけとして、どのように活用・展開されていくのか注目です。

 

参考記事

「100年フード」各地に続々 地域の食文化、次代へ – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

参考資料

食文化あふれる国・日本|文化庁 (foodculture2021.go.jp)

農山漁村の郷土料理百選について:農林水産省 (maff.go.jp)