岩国で見た現実 「騒音」のイメージに乖離も?

誰かが被害者にさせられる、このロシアンルーレットに参加させられている感覚は子どもの頃からずっとあって。(上間陽子)

8日付の朝日新聞「折々のことば」で紹介された一節です。沖縄生まれの上間さんが米軍基地を表した「ロシアンルーレット」という表現からは、運命を自ら選択できない不条理さが伝わってきます。

沖縄に日本にある米軍基地の約7割が集中していることは、広く知られている事実でしょう。一方、騒音問題が深刻な山口県の岩国市は残りの3割に含まれています。岩国基地は、岩国市のほぼ中心部に位置し、日本の海上自衛隊も基地の一部を共同で使用しています。昨年1年間で寄せられた航空機騒音に対する苦情は、7260件にも上りました。

先日、岩国市を訪れ、実際に米軍基地の騒音を体験しました。筆者は生まれも育ちも大阪で、ずっと関西に住んでいます。そのため新聞やテレビのニュースで「騒音問題」と聞いたときに、1番に思い浮かんだのは飛行機の騒音でした。しかし、実際の離陸時に居合わせると、その騒音の大きさは想像を遥かに超えていました。戦闘機を目の当たりにするのは初めてで、思っていた以上の轟音と振動に思わず驚きの声を上げましたが、自分の声も全く聞こえないほでした。

離陸する戦闘機(8月28日、筆者撮影)

街を歩くと、アメリカナンバーの車や英語表記の看板が多く見られ、米軍との近接した生活が強く感じられました。現地で案内をしてくれた平和委員会の方によれば、岩国基地は沖縄の嘉手納基地と並ぶ規模で、基地内には小中高校や医療施設が整備されているそうです。また、米兵らの住宅の家賃や水光熱費、さらには基本給などの労務費までが同盟強靱化予算(思いやり予算)で賄われています。防衛省によれば、令和6年度の在日米軍関係経費は予算段階で4311億円に上るといいます。

(8月28日、筆者撮影)

元々は物価や賃金が高騰したことや、国際経済情勢の変動によって米側が負担する経費が増大したことで、1970年代から在日米軍の駐留費を日本側が自主的に負担するようになったものです。それらすべてが税金で賄われていることを考えると、もっと日本国内の問題を解決する政策に資金を有効活用できるのではないかと憤りも感じます。

一方で、地元に基地があることで交付金という形で恩恵を受けています。岩国基地を取り巻く2市2町は15年間で、総額322億円という交付金を受ける予定で、公園の整備、英語交流センターの運営などに充てられるといいます。

しかし、それらを考慮したとしても騒音や米兵による犯罪などは許しがたい問題です。つい先日には岩国基地へのオスプレイの配備が容認されました。これらは簡単に解決できるものではありませんが、金と安全を天秤にかけて在日米軍を正当化することはできないと考えます。

また、騒音問題については地域住民の声にもっと耳を傾けてほしいと感じました。彼らが日々感じている騒音と、私たちがメディアを通してイメージする騒音には、少なからず乖離があるのではないでしょうか。住民ではないから関係ないと思うのではなく、ロシアンルーレットで米軍基地との共生を免れたにすぎない、ということを肝に銘じておきたいものです。

 

参考記事:

8日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「折々のことば:3199 鷲田清一」

8月30日付 朝日新聞朝刊「岩国オスプレイ、知事も容認」

読売新聞デジタル「岩国基地に新交付金 防衛省…2市2町15年で322億円」

 

参考資料:

山口県ホームページ 基地関係・米軍岩国基地の概要 

防衛省・自衛隊 同盟強靱化予算(在日米軍駐留経費負担)

岩国市ホームページ 基地関連