やる気がないのは心の弱さ? やる気を引き出す対処法とは

9月に入り、仕事や学校が始まった人が多いかと思います。筆者は先日、課題図書として吉田たかよしさんの「『ついつい先送りしてしまう』がなくなる本」を読みました。

多くの大学で8、9月の2ヶ月間が休みになります。ダラダラ過ごすのではなく、有意義な夏休みにしようと意気込んでいました。本書からは、やる気の有無に関わらず、目の前の課題に取りかかるヒントを得ました。

今回はここで書かれていた脳のクセのパターンと、やる気が起きない時でも行動に移すための工夫について紹介します。

脳のクセのパターンは大きく分けて4つあります。

①つい後回しにする「めんどくさ脳」

幼年期からゲーム、携帯電話、パソコンに触れて受動的でも情報が大量に入ってくる環境で成長した結果、脳が自発的に努力しなくても興奮する経験を繰り返しながら発育してきたことが背景にあると言われています。

②完璧を目指してしまう「キチキチ脳」

課題や提出物、企画書を作成する際、細かいところまでとことん突き詰めないと気が済まない。頭ではよくないとこだとわかっていても、何事も過剰にキチキチやってしまう。その結果、ズルズルと先延ばしにしてしまって期限を守れないという特徴があります。

③自分を過信する「なんとかなるさ脳」

「私は仕事が速いから、今からやらなくても大丈夫」「いつもの調子なら、前日に準備を始めても間に合うはずだ」。このように自分の力を過信して先送りにしてしまうというのがこのタイプによく見られる現象です。

④心配しすぎの「ネガティブ脳」

このタイプの人には「報告書にこんなことを書いたら、上司から大目玉を食うに違いない」「プレゼンにこんな資料を出したら、みんなに笑い物にされるんじゃないか」といった不安にとらわれ、結局、一向に作業が進まないという現象が見られます。また、自己肯定感が低く、やればできるという自信が欠如していることが多いという特徴が挙げられます。

同じ大学に通う3年生数名に「やる気が起きないのはどういう時か」と聞いてみました。

・課題が面白くない時。この課題が自分の将来にどのような意味があるのかわからない時。

・溜まっていた仕事を終わらせた時。達成感から少し時間が経つとやる気がなくなる。

・就活などゴールが見えない時。

・生活習慣や自分のメンタルが荒れている時。部屋が汚い時。

・やる気が起きないから一旦ベッドに行くと、動けなくなってしまい何もできなくなる。

・前日にやることを決めていたが、予定していたよりも遅く起きてしまった時。その日1日をもう取り戻すことはできないと思い、やる気がなくなる。

どれも共感するものです。一度は経験したことがあるという人も多いのではないでしょうか。

やる気が起きない現象は誰もが経験したことがあると思います。そこで次の行動に移すか、やる気がないまま過ごすかは、対処法を知っているか知らないかで大きく異なってきます。本書ではタイプ別の有効策と「先送りしない脳」に根本から変わるトレーニング方法、症状別10の処方箋について述べられていました。

その中で印象的だった「お試し5分法」について紹介します。

人間は脳のA10神経が働くことによって、快感物質であるドーパミンが側坐核に供給されます。その時、側坐核が興奮して「よし、がんばるぞ!」と先送りにしたくない、その場でやりたいという気持ちが自然に起きてくるそうです。

この本来あるべき脳のシステムが起きにくくなっているのが「めんどくさ脳」で、その対策として側坐核を興奮させることができるのが「お試し5分法」です。

先送りにしたくなった時、試しに5分間に限定して取り組むという方法です。先送りしていたことをいざ始めてみると意外と集中できて、気づけば長時間やっていたという体験を持つ人はいませんか。

5分間作業をしていると、脳内のやる気の中枢である側坐核が興奮状態になり、やる気が高まってくる現象を作業興奮と呼ぶそうです。本書では5分試しにやってみてもやる気が出ない時は、きっぱりと作業を打ち切ることをおすすめしています。脳はいつもやる気が出るように設計されているわけではなく、脳が今それをやるのに適していない状態にあると考えられるからです。

筆者もこの方法を実践しています。課題や片付け、掃除などやる気が起きない場面は日常に溢れています。限定して5分やってみるというのはそこまでハードルが高くなく、とっつきやすさを感じます。一旦やり始めると案外楽しく思えてきて、その結果自分でも無意識のうちに継続してやっていることに気づきました。

このように、やる気が起きない時にどう対処するのかを知っておくことで、単にやる気がないからやらないという選択ではなく、やる気がないけどやってみようという気持ちにもなれます。

人を待たせてしまう、期限が守れない、何でも後回しにしてしまう、など「ついつい先送りにしてしまう」のは心の弱さではなく、先送りしてしまうクセが脳に染み付いているからだということも知りました。

やる気が起きない時に自分を責めるのではなく、脳のパターンを把握し、工夫次第で上手く対処していけるのだと思います。みなさんも自分の脳のクセを知ることから始め、休み明けの生活を乗り切ってみませんか。

参考資料:

吉田たかよし「『ついつい先送りしてしまう』がなくなる本」(青春出版社、2019)