連載「世界で4番目の大地震から学ぶ」の第4回、最終回です。今回は、東日本大震災のなかで、実際に避難所の運営を経験されたという語り部の方から学んだ、災害関連死の防止策についてお話ししたいと思います。
大切なことは、「TKB48」をいかに良い状態で維持するかだと教わりました。
TKB48と聞くと震災と無縁な華やいだ印象ですが、実は極めて深刻な問題、T(トイレ)・K(キッチン)・B(ベッド)・48(48時間以内)を略した言葉です。避難所運営において、トイレ・食事・寝床を、48時間以内に整えることが重要になります。清潔に利用出来るトイレ、健康に支障のない食事、衛生面に考慮できる簡易ベッド。これらを迅速に確保することが求められるというわけです。反対に、TKBが劣悪だと、災害関連死に繋がる恐れが高まりかねません。
震災当時の避難所の状況は、TKB48とはほど遠いものでした。トイレは、津波でヘドロがたまり使えなかった。避難所での食事は、わずか145枚の食パンを860人で分けるところから始まった。十分な寝床を確保することが難しく、何日も床で眠った。語り部の方の言葉からは、当時の避難所の状況がいかに過酷で劣悪だったのかが伝わってきます。
災害時は、ライフラインや交通網が遮断される恐れがあります。物資を確保し、支援を充実させることがいかに難しいのか、誰もが想像できるはずです。緊急時の対応だけでは、限界があります。今回、語り部の方から直接お話を伺ったことで、そのことを痛感しました。
平時から、どんな備えが必要か。個人ではもちろん、避難所運営に直接携わる自治体はもちろんのこと、住民や警察、消防、市民団体、学校など多くの関係者が広い視点から考える必要があるでしょう。
震災前と後を比較できる石巻復興祈念公園の景色(2024年8月10日、筆者撮影)
震災前と比べて、変わってしまった石巻の景色が物語るものがあります。今回、現地を訪れて、感じたこと。それらは、私たちに多くの学びを与えてくれました。
「昔は、よく行く銭湯やおいしいお寿司屋さんもあったんだけどね」。そう話す地元の方の言葉に、言い表せない重みを感じました。
ですが、一方で変わらずに続く人の営みがありました。復興の歩みや、石巻で暮らす人々の温かさからは、人間が持つ力強さを教わったように思います。
全4回の連載「世界で4番目の大地震から学ぶ」が、災害への学びや防災の重要性について、理解を深める一助となれば幸いです。この連載を機に、私たちと一緒に、災害や防災と向き合ってはみませんか。
参考記事:
6日付 朝日新聞朝刊(社会総合)「能登地震関連死、21人認定」
参考資料:
全日本民医連「T(トイレ)K(キッチン)B(ベッド)48(48時間以内)で人権守る避難所を 避難所・避難生活学会理事 榛沢和彦さんに聞く」