日本一人口が少ない青ヶ島村 独特な島の地形と暮らしの関係を実感

八丈島から約70km、船で3時間の場所に日本で最も人口が少ない自治体があります。その名は青ヶ島村。1つの島からなり、人口は162人、面積は5.98㎢ほど。青ヶ島は黒潮の中央にあることから船は欠航になる場合があり、出航率は50~60%程度といいます。その離島に船で向かいました。

青ヶ島港(三宝港)(8月12日、筆者撮影)

 

1785年に天明の大噴火が起こり、全島民が近くの八丈島へ避難を余儀なくされ、無人島となった時期もあります。噴火から50年後の1835年には約240人が島に戻ったといわれています。昭和18年に青ヶ島村として独立したときの人口は407人だったそうです。

港から島中心部の町まで、偶然通りかかった人の車に乗せてもらい向かいました。島には商店が一つしかなく、日用品などはネットショッピングで買うことが多いそうです。欠航が少なくないので、少し多めに注文します。到着は早くて3~4日がかかるため、生鮮食品などは島内のお店でしか買えません。去年の夏は台風の影響もあり、2週間ほど船が出航しなかったそうです。テレビをつけると、島が自主放送をしているチャンネルがあり、港やヘリポートのライブ中継が流れていました。

宿の人によると、青ヶ島の水は降雨を利用しているため節水が呼びかけられているそうです。「広報あおがしま」にも貯水率が月ごとに公開されており、水の大切さが分かります。山の斜面には水道施設があります。緑色に塗られた斜面は集水面となっており貯水機能を果たしています。

水道施設(8月10日、筆者撮影)

島には駐在所や診療所、図書館、保育園などの公共機関が揃っています。村立青ヶ島小中学校は1874年に開校し、今年で150周年を迎えます。生徒・児童数は小学校6人、中学校3人の計9人です。島には高校以上はないので、高校への進学を機に本土で一人暮らしをする人もいるとのこと。

筆者が訪れた8月10日は「牛祭り」の日でした。地元の人によると、牛の品評会があったことが起源だといいます。2019年以来の5年ぶりの開催でした。屋台で食事を楽しんだり、子どもたちが乗った山車が村を回ったり、前夜祭では花火もあがり大きく盛り上がっていました。

牛祭りの様子(8月10日、筆者撮影)

青ヶ島は現在も火山活動が続く火山島です。島全体はすり鉢のような形をしたカルデラ構造をしています。とりわけ、大小2つの噴火口からなる「二重カルデラ構造」は世界的にも珍しい地形といわれています。外輪山(外側のカルデラ)の中にある池之沢地区では、地熱による水蒸気が地面から噴き出ており、サウナを楽しむことができます。島では、噴気孔から出る蒸気のことを「ひんぎゃ」というそうです。建物の前には地熱釜があり、野菜などを蒸して食べることができます。サウナの洗い場の水道は地熱の影響ですぐに温まってしまい、冷たい水を浴びることはできませんでした。

二重カルデラ(8月10日、筆者撮影)

23区とは大きく異なる東京都青ケ島村。火山島に住み、火山資源を生かしながら生活する島の人々を垣間見たことで、改めて日本が島国と呼ばれる理由を実感しました。

 

参考資料:

青ヶ島村ホームページ

https://www.vill.aogashima.tokyo.jp/top.html