大学生の成績表「GPA」(評定平均値)の弊害

早いもので、もうすぐ9月。夏休み真っ只中と言いたいところですが、気になるのは成績です。著者の大学では9月初めに春学期(4月〜7月)の成績が発表されます。無事に授業に必要な単位数を取れたかどうかも心配ですが、学生にとってもう一つ気がかりなのが、「GPA」(評定平均値)です。

GPAとは、個人の成績を教科ごとに4段階で評価し、それを平均したものとなります。著者の大学では一番良い成績がAと表現され、評点は「4」となります。反対にDの評定は1点にしかなりません。そのため、GPAの最高値4.0に近ければ近いほど成績が「良い」とされます。大学によっては、A評価が秀と表現されたりしますが、評点は変わらず「4」というのが一般的です。Aプラスなどプラスの評点を追加するところもあるようです。

文部科学省によれば、全体の95%にあたる702大学がGPA制度を導入しています。同省が大学に対して実施したアンケートによれば同制度は、「大学教育の質保証を行う上で有効な制度」と位置付けられ、さらに「国際通用性のある成績評価を導入する必要」があるとされていることから、多くの大学がGPA制度を採用しているようです。

たしかに、GPAは現在様々なところで使われています。例えば、留学の際に希望する大学へ行くための判定基準となったり、大学院や奨学金出願の合否の基準となったりしています。さらには、GPAが一定水準より低い学生に対して退学勧告を行う大学は187校を数えます。

このようにGPAは、学生にとって人生を大きく左右するものの一つと言っても過言ではないでしょう。しかし、学生側がこの評定に一喜一憂するあまりに挑戦をしなくなっているとも感じます。

例えば、成績自体は優秀でGPAも高いのにもかかわらず、大学院進学を見据えてあえて授業を受講しないことで高い成績をキープしようとする人もいます。興味のある講義はあるけれど、単位認定が厳しいと噂されているため、単位を楽に取れる授業(楽単)を受講するなど、成績を気にして自らの興味・関心に沿っていない授業をとる人も多くいます。

もちろん、どの授業を受講しどのくらい勉強に精を出すかはその学生次第でしょう。ただ、挑戦を阻害するような制度になってはいないか疑問が残ります。学生が単位はとりやすいけれど学びが少ない授業へ押し寄せ、難しくとも学びが多い授業を避ける事態が、構造的に起きてしまうのであれば、大学の「質」向上のために導入したはずの制度が意味をなさなくなります。

近年、大学進学率は50%を超え、「大学全入時代」とも言われる昨今ですが、そもそも「大学」とは何かを一から議論する必要があるのかもしれません。

 

<参考文献>

文部科学省「質保証システム見直しに係る基礎資料集」

政策研究所「「国内大学のGPAの算定及び活用に係る実態の把握に関する調査研究」報告書」