目覚ましいケニアの経済発展 ―キーワードは「カエル跳び」?

先週、1週間ほどケニアに渡航し、ゾウやライオン、キリンなど野生動物が多く見られるマサイマラ国立保護区やアンボセリ国立公園を巡りました。「ビッグファイブ」と呼ばれるライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファローのうちヒョウを除く全ての動物を見ることができました。

(アンボセリ国立公園にて著者撮影)

豊かな大自然から一転、首都ナイロビに目を向けると高層ビルや大きなショッピングモールが建ち並び、サファリとは対照的でした。それもそのはず2021年に実質国内総生産(GDP)成長率7.5%を記録するなど、ケニアはアフリカの中でも急速に経済発展を遂げている国の一つでもあります。

日本貿易振興機構(ジェトロ)ナイロビ事務所の資料から抜粋(https://www.jica.go.jp/Resource/activities/issues/agricul/jipfa/africa_agri/ve9qi80000005ujs-att/20230125_02.pdf)

観光客の視点で見ると、非常にIT化が進んでいるという印象を受けます。特に携帯電話をほとんどの人が持っていました。マサイ族と呼ばれ、伝統的な生活を営む先住民族の方々もスマートフォンを用いて連絡を取っていたのには驚きました。それくらいケニアの人々にとって携帯電話は身近なものになっています。

総務省によれば、2021年のケニアにおける携帯電話普及率は、122.3%で計算上は全国民が所有していることになります。固定電話普及率が0.1%だということを考えあわせるといかに携帯電話が重要であるかがわかります。さらに通信の「質」も高く、著者が購入したSIMカードでは、ナイロビから離れたマサイマラ国立保護区内でも最先端の通信技術である5Gがつながりました。

(大自然の中でも5Gの電波が繋がる)

また、携帯電話番号が本人認証の代わりとなっていて、送金システムも整備されています。「M-Pesa」と呼ばれるサービスを利用すると銀行口座がなくとも携帯電話のショートメールサービス(SMS)を介して、お金を送ることができます。同サービスの利用総額は、ケニアのGDPの半分を超えたとも言われています。このように携帯電話はもはやケニア国民にとって欠かせない存在となっています。

携帯サービスの他にもライドシェアアプリ「ウーバー」が利用できるなどIT化による利便性が高い国といえます。アフリカなど経済発展が一気に進む一方で、十分なインフラが整備されていない地域では、最先端の技術が一気に普及する「カエル跳び」(リープフロッグ)現象が発生します。

既得権益が少なく、また規制などがない状態では最先端のサービスを実施しやすくなります。これからのケニアの経済発展もこうした「カエル跳び」によるシステムの導入にかかっているのかもしれません。

<参考文献>

日経電子版『アフリカのモバイル決済、一足飛びで普及 世界の7割 』2022年10月1日配信

総務省『世界情報通信事情 ケニア』

駐日ケニア共和国大使館『経済概観』