先日発表された2023年度の合計特殊出生率は、過去最低の「1.20」となり、大きな話題となりました。東京都知事選でも少子化対策が重要な論点となり、注目を集めたと思います。1972年は4.54だった出生率は、近年急速に落ち込んでおり、この問題に真剣に取り組む必要があることが分かります。
しかし、人口減少の一方で、近年はビルやアパート、住宅が次々と建設されていることを知っていますでしょうか。今年4月に総務省がまとめた「令和5年住宅・土地統計調査住宅数概数集計」によれば、08年には5759万戸だった住宅数が、13年に6063万戸、23年には6502万戸と増加の一途をたどっています。
私の実家の近くでも、大きなビルや新築住宅が建設され、街の賑わいが戻ってきています。一方で、よく見ると空き家も増えていることにも気づきます。こうした背景の一つに挙げられるのが、都市計画法だと考えられています。現行の都市計画法は、高度成長期かつ人口増加などがあった1968年のものです。50年以上も前の計画法では、現代とは大きく違うと思います。また、日本の都市計画は、諸外国と比べると規制が弱く、住宅が建てやすいといった背景もあるそうです。このようにせっかく建てた建物が有効に活用されていない現状もあります。
日本銀行は金利水準を0.25%に引き上げることを決定しました。金利が上がると、これから家を買おうとする人にとってはローンの負担が増し、せっかく建築されても買い手がつかないまま空き家になるリスクさえあります。
人口減少や物価上昇の厳しい状況の中で、「家を持ちたい!」と思う人は、どれくらいいるのでしょうか。一棟の家を建てるには多くの時間や費用、材料が必要です。また、建築工事の過程で排出される二酸化炭素も多く、地球温暖化の進行を助長しているように感じます。空き家となった住宅は、火事や不法投棄の場になる恐れもあります。
こうした点を踏まえると、建設業界と国、自治体の連携により将来を見据えた建築計画を作ることがますます重要になってくるでしょう。持続可能な都市づくりと環境保護の観点から、より緻密な協力が求められていると思います。
【参考記事】
1日付 日本経済新聞朝刊 (14版)1面 「日銀、0.25%に利上げ 『金利ある世界』回帰」
1日付 朝日新聞朝刊 (14版)1面 「日銀、0.25%に利上げ 国債買い入れ 26年に半減」
1日付 読売新聞朝刊 (13版)3面 「金利本格復活へ 日銀決定会合 『物価上振れを懸念』」
日経電子版(24年7月2日付‐経済教室)「都市住宅政策、都市計画は人口減少を前提に 浅見泰司氏(東京大学教授)」
【参考資料】