101年前の悲劇 防災の日の由来は

9月1日は何の日か知っていますか。私は9月1日生まれなのですが、幼いころはカレンダーに「防災の日」とあるのが気になっていました。防災の日について調べてみると、2つの由来があることが分かりました。

1923年9月1日、相模湾北西部を震源とするマグニチュード7.9の揺れが関東地方を襲いました。関東大震災です。神奈川県から千葉県にかけての広い範囲で甚大な被害が出ました。防災の日の由来の一つが、この関東大震災の発生日だというのは有名です。

約10万5千人の死者・行方不明者の9割を占めたのが焼死です。地震発生が正午前で昼食の時間と重なったこと、台風の影響で強い風が吹いていたことが影響し、東京都心で火災が広がりました。当時の東京は過密状態で、下町には木造家屋が密集していたそうです。

私は先日、東京都墨田区にある横網町公園を訪れました。子供が遊具で遊んでいましたが、普通の公園の雰囲気とは違います。ここには、震災時に3万8千人以上が亡くなった陸軍被服廠の跡地がありました。当時空き地だったことから、火災を逃れ多くの人が避難してきていました。火の粉が運び込まれた家財道具に移って一気に延焼。炎の竜巻である火災旋風を巻き起こしてしまったのです。

公園内には、犠牲者の遺骨を納める東京都慰霊堂と、東京都復興記念館が建てられています。記念館では、当時の遺品や写真・絵画のほかにも、復興を記念するポスターなどが展示されていました。屋外展示場には猛火によって変形した鉄柱や溶解した釘の塊が置いてあり、火災のすさまじさを目の当たりにしました。

鉄柱の溶塊(6月30日、筆者撮影)

防災の日のもう一つの由来は台風でした。9月1日は暦の上の「二百十日」で、立春から数えて210日目にあたります。台風が来襲する厄日とされているそうです。1960年の防災の日制定の前年に伊勢湾台風で戦後最大の被害が発生したことが大きな理由となりました。

今回、改めて地震、火災、水害など多くのリスクが身の回りにあることを実感しました。災害が発生したとき、特に注意したいのは情報収集についてです。先日の能登半島地震でも、救助を求める虚偽の投稿がなされ、逮捕者が出ました。日経新聞の記事では、SNSで注目を集め収入を得る「アテンション・エコノミー」の広がりが指摘されています。

101年前の関東大震災でも、流言が広がり朝鮮人が虐殺されるという悲劇が起きています。情報を得る場がSNSに進化し瞬時に拡散できてしまうからこそ、情報の正確さには神経をとがらせたいものです。

「不意の地震に不断の用意」。横網町公園に掲示してあった、関東大震災10周年記念標語です。遠からず巡ってくる防災の日までに、身の回りの備えを見直しませんか。

 

参考記事

朝日新聞デジタル「関東大震災直後の朝鮮人虐殺につながった流言はなぜ広がったか」

日経新聞電子版「災害時のSNSデマ、警察が厳格姿勢 安易な拡散は要注意」

参考文献

内閣府 防災情報のページ 「関東大震災100年」特設ページ

気象庁 「関東大震災から100年」特設サイト

都立横網町公園HP 

東京消防庁 防災の日と二百十日