姓名は、私たちが生まれて初めて手にするアイデンティティです。自分の名前にすっかり馴染み、愛着を持つ人が大半でしょう。以前友人が「名字が変わると自分って感じがしない。いまの名字が一番しっくりくる」と、話していたことを覚えています。
自分の姓名を選択できる制度は、私たちがアイデンティティを尊重し生きるために必要でしょう。19日付の朝日新聞朝刊によると、自民党は3年ぶりに選択的夫婦別姓制度の議論を再開しました。経団連などの要請に応じた格好といいます。しかし、党内では反対意見が根強く、論議の先行きの見通しは立っていません。
夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度
法務省HPによる制度についての説明です。選択的夫婦別姓制度では、婚姻にかかわらず自分の姓を決定できるということです。しかしながら、現状は以下の通りです。
現在の民法のもとでは、結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が、必ず氏を改めなければなりません。そして、現実には、男性の氏を選び、女性が氏を改める例が圧倒的多数です。
結婚すると、女性が姓を改める場合がほとんどです。多くの女性が社会で働く今日、姓を変える影響はアイデンティティの喪失にとどまりません。
先日、大学の講義で選択的夫婦別姓制度の話題になりました。講義を担当する女性教授は、自分自身の研究成果を示すために簡単に名字を変更することはできないと話します。キャリア形成にも、大きく影響があるということです。また、アメリカをはじめ海外では選択的夫婦別姓が認められている現状について学びました。アメリカやイギリス、オーストラリアでは、結婚にともない姓を改めることは義務付けられていません。
働き方やジェンダーなどあらゆる場面で、多様な選択が認められつつあります。選択的夫婦別姓制度も、その一つとして推進されるべきではないしょうか。家族の一体感の喪失といった、客観的な根拠に欠ける意見で一蹴されることに不満を感じます。社会の変化とともに、法律がより良く変わることに期待したいものです。
参考記事:
19日付け 朝日新聞朝刊(総合)13面「別姓議論 重い腰のまま」
参考資料:
法務省HP「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について」