根拠に基づく政策形成(EBPM)とは何か

日経新聞が、17日付朝刊から「エビデンス不全」と題した特集を始めました。ここでは、政府や自治体が実施する政策の中には、曖昧な根拠のまま打ち出されたものもあり、無駄につながっているとの指摘がなされています。

そんな中、昨今「根拠に基づく政策形成」(EBPM)が注目されていますが、どのようなものなのでしょうか。事例も交えつつ考えたいと思います。

内閣府によれば、EBPMは「政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること」と定義されます。従来の政策立案過程では、政策決定者がたまたま見聞きしたり、ヒアリングで得られた「エピソード」に頼ったりして、立案されることが多々あります。しかし、そうした政策は実際に効果があったかどうか緻密な検証がなければ、行政の無駄につながりかねません。

そこで、事象と事象の間の因果関係を明らかにし、定量的に検証ができる指標に基づいて、政策を立案することが重要だとの認識からEBPMが提唱されてきました。元々は、「エビデンスに基づく医療」(EBM)から派生した概念とされます。科学的根拠に基づいた医療を提供するという考え方が徐々に政策の策定の分野にも浸透し、1997年には英ブレア政権が、2009年には米オバマ政権がEBPMを政策立案に採り入れました。

日本でもEBPMを推進する動きが10年代から出てきます。17年になると、EBPM推進委員会が設けられ、政府全体で推進する体制が構築されました。現在では、行政改革推進会議の下で議論が続けられています。24年3月15日の参議院予算委員会で、岸田首相が「EBPM、こうした手法の活用は重要であると政府も強く認識」していると答弁しています。

ただ、17日付日経新聞朝刊で指摘されるように、前例主義の甘い見通しで政策が決められるケースも散見されます。待機児童問題を解決するために、保育所の増設が推進されました。しかし、同記事によると現在保育所が過剰に増設されたことで、需要とマッチせず余ってしまっていることが指摘されています。

このようにまだまだEBPMの実践は道半ばと言えるでしょう。有権者である国民が選挙の際に、政党の公約を踏まえ、どれだけ根拠があるのかを判断して投票行動を取ることはEBPM推進の手助けとなるかもしれません。

<参考文献>

17日付日経新聞朝刊(東京14版)「増やした保育所4割余る 政策硬直、需要とズレ」

衆議院調査局「EBPMの現状と課題 ―国会はEBPMにどう向き合っていくべきか―」

経済産業省「EBPMの強化等について」