【カナダデー】7月1日 自国の誕生を盛大に祝うカナダ国民

今月1日はカナダが自治領となった記念の日でした。カナダでは「Canada Day」と呼ばれ、多くの人がバンクーバーの中心部に集まって祝いました。カナダは先進国のなかでも若い国です。1867年にイギリスの植民地から独立し、今年で157年になります。

イギリスからの独立以降をカナダと呼んでいますが、それ以前にも複雑な歴史があります。

まず、先住民時代です。カナダには多くの民族が住んでいました。農耕と狩猟で暮らすニューロン・ウェンダット族、狩猟採集民だったクリー族とデネ族、バイソンの群れを追う遊牧民のスー族、北極の野生動物を食べて暮らすイヌイット族などです。数多くの民族が一緒に暮らしているため、土地、資源、地位などを巡って争いや戦争が勃発していました。

その後、ヨーロッパ人が到来し、歴史の流れは大きく変わります。17世紀にはカナダ東部がフランス領となります。これは仏英間で起こった7年戦争後に結ばれたパリ条約によりフランスが植民地を放棄する1763年まで続きました。後にカナダはイギリスの統治下に入り、約100年間植民地の状態が続きました。そして、自治権を得て1867年7月1日に正式にカナダが誕生しました。

現在でも、先住民族の文化も維持しつつ、植民下で培った多文化主義を独自のものとしています。観光スポットの1つであるスタンレーパークには先住民の培った文化の象徴である「トーテムポール」が立てられています。また、お土産ショップに行くと、「トーテムポール」の模様が描かれたマグネットやステッカーなどが並んでいます。

これまで歴史について話してきましたが、実際に7月1日はカナダ人にとってどんな日になっていたのでしょうか。

筆者には驚きの1日でした。日本の建国記念日は平安神宮で奉祝揮毫(きごう)が開催されたり、全国各地の神社で建国祭が開かれていたりします。しかし、国民全員が沸き立ってその日をお祝いしたりはしません。多くのメディアも首相メッセージや平安神宮での行事について取り上げるぐらいです。

それだけに、カナダの盛り上がり具合には目を見張りました。当日、筆者は仕事が入っていたのでバスに乗ったのですが、バス停から乗ってくる人の9割以上は「CANADA」と印刷された赤と白の服を身に纏っていました。街を歩いていてもこの日を祝うパネルが置いてあったり、国旗が飾られていたりしていました。お店にやって来るお客さんもCANADAに染まっていました。日本の習慣から考えるととても奇妙な光景でしたが、バンクーバーに住む多くの人が盛り上がっている様子からはとても温かみを感じました。

バンクーバーの中心部ではパレードが朝から行われ、ブリテッシュコロンビア州南西部に位置するバンクーバーの中心部から車で30分ほどのバーナビー では夜花火が打ち上げられました。パレードは見ることができませんでしたが、花火は職場の人に連れて行ってもらいました。日本の花火大会の雰囲気とは少し違って、音楽に合わせて花火が舞うような演出に多くの人が酔いしれていました。

カナダでの生活を始めてから、国民の愛国心の強さをすごく感じます。スーパーではカナダのマークが入ったケーキが売られていたり、一般の100円ショップのようなお店でもカナダのグッズが売られていたりします。世界の幸福度ランキングで11位。愛国心は幸福度から来るものなのでしょうか。

1年しかカナダにいれない中、とても貴重な1日を体験できました。

 

参考記事:

・2月9日付、日本経済新聞。「岸田首相「地震乗り越える」 建国記念の日メッセージ

・2022年2月12日付、朝日新聞デジタル、「世界平和に願い込め、小学生らが平安神宮で奉納揮毫」

・7月1日付、Global News、「Canada Day: Celebrations held nationwide, Trudeau hails ‘inclusive’ values」

・7月1日付、CTV News、「Canada Day festivities attract hundreds at ceremonies, parties across the country」

・7月1日付、CBC、「Trudeau hails Canadian values as celebrations kick off marking Canada Day」

 

参考文献:

・Government of Canada、「Discover Canada – Canada’s History」

・Reutersグラフィックス、「世界の幸福度ランキング」