深刻化する外国人の受け入れ問題ー求められる理解と覚悟ー

筆者の住む京都では、日々多くの外国人を目にします。観光客だけではなく、京都で暮らす外国人の数も非常に多い印象を受けます。少子高齢化が加速し、労働力不足が問題視されている中で、今後ますます移民の増加が予想されます。今回は、そんな人々について取り上げたいと思います。

 

まずは移民と難民の違いについて簡単に説明します。移民とは、経済的な理由から日本に来た人々を指します。一方で、難民とは政治的、社会的な迫害、さらには戦争などを逃れてやってきた人々を指します。同じ日本に来た外国人という存在ですが、その背景や位置付けは異なります。

 

筆者は今年の4月にヨーロッパ7カ国を周遊しました。ドイツに訪れた際に、ルーマニアからの移民の男性と話す機会がありました。ロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、ルーマニアを離れる人が増えていると彼は言いました。また、ドイツには、多くの移民が住んでいるため、比較的過ごしやすい環境が整っていると聞きました。一方で、ドイツは2015年に紛争地域等から流れてきた90万人もの難民の入国を認め、世界から注目を集めました。

グローバルノートの世界の移民人口ランキングの統計(2020年)によると、ドイツはアメリカに次ぐ、第2位となっており、積極的に移民を受け入れていることがわかります。その背景としては、①労働力不足を補うため、②EU加盟国の国民は、EU圏内であれば自由に住む場所や働く場所を選べるため、という2点が挙げられます。

しかし、国民の中には移民に対する偏見などもあり、外国人嫌悪による憎悪犯罪(ヘイトクライム)の件数は2022年には1万件を超えています。受け入れ体制の充実だけではなく、移民が過ごしやすい法整備と人々の理解が求められています。

日本でも近年、移民や難民の受け入れに関するニュースがよく取り上げられています。出入国在留管理庁(入管庁)の発表によると、2023年6月末における、中長期在留者の総数は約294万人、これに加えて在日コリアンら特別永住者は約28万5000人がいます。前年末に比べると約14万9000人増加しています。

日本で住む外国籍の人々は、在留資格を取得することが必須です。この在留資格の審査を行う機関が入管庁です。入管庁はまた、オーバーステイ(在留許可期限を越えて滞在)などで在留資格がない非正規滞在の人たちを、行政権限で全国9カ所以上の施設で収容しています。

こうした在留資格のない滞在者の中には自国での迫害により日本にやってきたとして難民申請をする人もいます。入管庁の発表によると、令和5年の難民申請数は13,823人でした。しかし、申請が受理され、難民認定されたのは303人にとどまります。また、今月の14日には、入管法が改正され、3回目以降の難民申請で認められなければ、強制送還の対象になることが決定しました。祖国での紛争や不安定な政治情勢などにより、逃げ場のない彼らは、1日でも早く安心できる場を手に入れたいと考えているはずです。難民申請の手続きの困難さや収容所の劣悪な環境など、彼らに対する非道徳的な扱いが横行していることも事実です。

外国人の受け入れに関しては、治安悪化や、日本人の働き口の減少などを危惧する意見も多く見られ、まだまだ歓迎はされていないと感じます。しかし壁を作っていては偏見はなくなりません。国境を超え、移動してきた人たちの背景を学び、日本で共に暮らすための理解と覚悟が求められると筆者は考えます。流入のスピードに日本人の理解や覚悟という受け皿の形成が追いついていないようにも感じます。

外国人と一括りで論じるのではなく、一人一人と向き合い、受け止める姿勢が必要です。

【参考文献】

難民支援協会 ドイツはなぜ難民を受け入れるのか?政治的リーダーシップと強靭な市民社会

入管庁 収容施設について

・入管庁 令和5年6月末現在における在留外国人数について

DRIVE ドイツにおける移民・難民受け入れの歴史 ~ドイツ・EUの移民制度とソーシャルファームから見る、包摂された社会のつくりかた(3)~

グローバルノート 世界の移民人口 国別ランキング・推移

【参考記事】

2024/5/11付 朝日新聞デジタル (Monthly World)「自由の国」求めた越境者たちは NYへ3万人バスで移送、訴訟も

2024/6/15付 朝日新聞デジタル 外国人の「育成就労」成立 特定技能へ移行促進、人材定着図る

2024/6/9 付 朝日新聞デジタル 「難民申請中でも強制送還」可能に 改正入管法10日に施行

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