1年後に控える大阪・関西万博 高まる期待と不安

来年4月から開催される2025年大阪・関西万博まで、残り300日を切りました。開催が近づいたにもかかわらず、なおも膨れ上がる建設費や海外パビリオンの建設遅れなど多くの課題が残されています。

先日、関西万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が理事会を開き、参加国向けの簡易型パビリオン「タイプX」の建設費などに最大76億円を追加で支出することを決定しました。「タイプX」は、資材価格の高騰や人手不足で参加国の施工業者探しが難航していたなか、建設を加速させる切り札として、昨年8月に新たに提案したものです。会場建設費の予備費130億円を充てることも検討し、総額の2350億円の範囲内に収めるとしています。

もともと60か国が「万博の華」と呼ばれるデザイン性にあふれた「タイプA」への参加を表明していました。しかし、19日時点で51か国にまで減少しており、今後は開催までに完成が間に合うのか各国に聞き取りを行う予定です。

大阪府在住の大学生(18)に万博のイメージを聞いたところ、「そもそも万博に対しての知識がなく、どんな展示が行われるのか知らないというのもある。ただ、ニュースを見る限り、外国が出展を辞退したというような悪い話ばかりで、本当にうまくいくのか」と話していました。

筆者も大阪在住ですが、万博について詳しく知らないことに同意見でした。しかし、改めて万博について調べたところ、意外と面白そうだという印象を持ちました。外国政府から国内の民間パビリオンまで様々な展示を観ることができるのは魅力だと感じます。

また、万博は新しい技術が生まれる場でもあります。現在当たり前に使用しているエレベーターは1853年のニューヨーク万博、動く歩道は1970年の大阪万博、ICチップ入り入場券やAED(自動体外式除細動器)は2005年の愛知万博で披露されたものです。

大阪万博でも最新技術を使用した展示に注目が集まります。例えば、「空飛ぶクルマ」、超電導技術を活用した「浮く靴」や、特定のキノコが持つ発酵のための遺伝子を別の植物に組み込んだ「光る植物」の展示が予定されています。

ただ、先ほどの大学生は7500円のチケット代についても懸念を示し、「夢洲へ向かうための交通費も入れると高額になる。正直言うと、同じくらいの値段を払うならユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行きたい。」と話していました。多くの人の関心を集めるには、テーマパークのような魅力があり、よほどの見どころポイントを提供することが求められているのではないでしょうか。

今月28日時点での入場券の販売実績は、前売り目標である約1400万枚の2割にあたる約290万枚でした。しかも、その大半は企業が購入し、個人での購入は伸び悩んでいる状態です。

10月からは電子チケットに加え、来場日時の事前予約が不要な紙の入場券を全国のコンビニエンスストアなどで販売する方向で進んでいます。利便性を高めて購入を促す狙いがあるといいます。

万博の運営費用の多くは、入場券の売り上げ収入でまかないます。そのため、見込んだ売り上げに届かなければ、赤字になってしまう可能性があります。

もちろん円安や資材の高騰など、さまざまな影響がありますが、これほどまでコストが増大したことは見通しの甘さにあるのではないかと考えます。最新の技術や新しい製品をこれほどの規模で展示する機会はなかなか無いからこそ、計画段階でしっかりと詰めて責任を持って取り組むべきでした。赤字が出た場合、それを補うのは税金であることをもっと自覚してほしいと、一市民として強く願います。

大阪府庁 正面玄関(3月19日 筆者撮影)

参考記事:

28日付 読売新聞(大阪14版)1面「大阪・関西万博 建設費、最大76億円追加 予備費充当検討 総額範囲内に」

26日付 読売新聞オンライン 「万博、事前予約不要の紙チケット販売へ…10月からコンビニなどで

26日付 朝日新聞デジタル 「幻と消えたタイプAパビリオン 遅れる建設、万博参加国の苦悩とは

16日付 日本経済新聞 「見えてきた大阪万博、西陣織建築や光る植物 あと300日

 

参考資料:

EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト入場チケットの販売状況について