次の東京のゆくえを占う東京都知事選が6月20日に告示されました。実は、この選挙、告示日の翌日から投票することができます。それが、期日前投票制度です。2003年の公職選挙法の改正で創設されたもので、投票日前であっても所定の場所で投票できる制度です。今回の都知事選挙では前回から13か所増えた317か所で期日前投票が実施されます。
この制度を利用した投票は、近年増加しています。22年の参議院議員選挙(7月10日投開票)では、全体の有権者の18.6%にあたる1961万人が期日前に投票を済ませました。これは過去最多で、初めてこの制度が採り入れられた04年の参議院議員選挙(7月11日投開票)の717万人と比較するとその差は歴然です。
投票所も徐々に増えています。総務省によると、04年の参院選では4486か所でしたが、22年には6169か所まで拡大しています。このような投票所の増加に期日前投票の認知度の上昇が相まって、近年の利用者の増加へつながったと言えるでしょう。
この制度には一つハードルが設けられています。期日前投票を行う理由を記した「宣誓書」の存在です。公選法第48条の2によれば、仕事や旅行、病気など6つの理由に該当する場合、期日前投票を行うことができるとされ、同法施行令第49条の8では、期日前投票の理由を申し立て、それが正しい旨の「宣誓書」の提出が定められています。
さて、この理由の記載は必要でしょうか。たしかに、投票日が定められている以上、原則としてその日に投票するのが通常であり、それより前の投票は「例外」と位置付けられてしかるべきだと思います。ただ、理由を聞くことで一定のハードルを設けたとしても、それを担当者が逐一確認することはありません。有権者が機械的に丸をつけるという形骸化した制度になっているのではないでしょうか。
また、原則と実態がかけ離れている面も否めません。過去には、期日前投票をした人の割合の方が当日に投票した人より多い県もありました。17年の衆議院議員選挙(10月22日投開票)において、秋田県では全投票者のうち52.8%が期日前投票でした。
当日に投票して開票するということを原則とする日本の選挙制度では、期日前投票に対して理由を求めるのは当然かもしれません。しかし、実態とかけ離れたこの制度を見直す時期が来ているのではないでしょうか。
<参考文献>
21日付読売新聞夕刊社会面『都知事選 期日前投票始まる』
日経電子版『参議院選挙、期日前投票1961万人 過去最多を更新』2022年7月10日配信(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA085H20Y2A700C2000000/)
NHK『激増 期日前投票! いったい何が?』(https://www.nhk.or.jp/senkyo/chisiki/ch18/20180301.html)