続く円安 海外渡航にたちはだかる厚い壁

コロナが落ち着き、筆者の周りでも留学や旅行で海外に行く人が増えています。そこで気になるのは円安の動向だと思います。筆者は大学生になるまで円相場とは無縁だと思い込んでいました。しかし、国外に出て通貨を両替する経験を通じて、円安がいかに我々の生活と密接に関わっているのかを実感しました。

 

6月19日付の朝日新聞デジタルの記事によると、ある学生はアルバイトで海外大学進学のための資金を貯蓄していたのですが、円安の影響で先延ばしにすることを余儀なくされました。現在1米ドル150円台の円安が続いています。この状況では、110円前後だった5年前、100円台だった10年前と比較して、海外での学費や生活費の負担は段違いとなっています。留学を検討する学生の中には経済的な事情から渡航を諦める人もいると述べられています。

筆者が在学している立命館大学の留学プログラムでは、立命館・カルフォルニア大学デービス校への半年間の留学で、2019年度が185万円程度であったのに対して、2024年度は288万円〜292万円と1.5倍の費用が想定されています。国際教育センターのスタッフの方にインタビューすると、授業料や航空券の値上がり、円安、物価高が影響していると言っていました。

22年度はコロナ禍が明けて初めてプログラムが再開されました。19年度の資料を参考に応募をした学生の中には、新要項で高額なのに驚き諦める人もいたそうです。その一方、23年度の学内プログラムを通じて留学に参加した学生は1806名で、コロナ禍以前と比較して増加したことも教えてもらいました。

 

留学費用は上がっているにも関わらず、参加者が多かった背景には、コロナ禍で足止めされた分、費用が高くても行きたい人が多いほか、「ここから先、費用が下がることが見込めない」という諦めや慣れも影響しているのではないかとのことです。

また、国際関係学部の4回生は、父親が滞在しているシンガポールをこの春に訪れた際、物価高や円安の影響を感じたと言っていました。

「円安が続いたとしても海外には行きたい。しかし今の円安状況は変わってほしい。せっかくお金を貯めて行っても何にも楽しめないのは悲しい」と話します。

 

 

筆者も昨年の夏にオーストラリアに短期留学した際、初めて円安を身近に感じました。8月8日から9月13日までの滞在で、関西国際空港での出発日に換金をしたのですが、当時の為替レートは1米ドル143.32円でした。

ホームステイをしていたため、日々の生活で困ることはそれほど多くはありませんでした。しかし、休日に友人と外食をするとなると、日本円に換算して1食2000円から3000円ほどかかっていました。オーストラリアが水不足と言われていることも関係しているのかもしれないのですが、1Lのペットボトル1本5ドルほどしていました。

現地にいた時は深刻さをそれほど感じておらず、むしろ物価水準に慣れていきましたが、日本に帰ってからクレジットカードの請求額を見て驚かされました。ギリシャに行った際にも、現地の空港で2万円ほど換金したのですが、手元に帰ってきたユーロはどこか少なく感じてしまいました。

 

2023年9月9日 筆者撮影

1人2000円以上はした外食(オーストラリア)

 

4日付の朝日新聞の記事では、為替以外にも最低賃金の影響があることが指摘されています。海外の先進国ではインフレに伴って、最低賃金が引き上げられています。これは人手不足を解消するため、待遇を上げているのです。しかし日本では、物価の影響を考慮した「実質賃金」は2年ほど連続して前年を割り込んでいるそうです。

清掃のパートをしていたホストマザーは、土日祝日に働くと時給が1.5〜2倍になると教えてくれました。24年度オーストラリアの最低賃金(時給)は日本円で約2506円、京都市の最低賃金の2倍以上にもなります。

筆者は時給の高さに驚いたのですが、マザーに日本の多くのアルバイトではそんな好待遇は望めないと伝えるとなぜそんなに賃金が低いのか、待遇が悪いのか納得できないようでした。

 

コロナ禍が明け、渡航制限がなくなってきていることから、国外へ行きたいと思う人も多くなっています。留学を諦める学生がいたり、外国へ行っても円安を気にしすぎて楽しめない人がいたりする現状は残念に思います。

筆者自身も旅行が好きなので、長期休暇を利用してまた海外旅行をしたいと考えています。

為替市場と最低賃金の動向が共に改善されることを望みます。

参考記事

6月4日付 朝日新聞デジタル 「(多事奏論)円安の世相 『とにかく安い!』にざわつく心 稲垣康介」

6月19日付 朝日新聞デジタル 「『一般人には無理』留学の負担が円安で激増 国際競争力低下の懸念も」

参考資料:

JETRO 「最低賃金を7月から3.75%引き上げ(オーストラリア)」https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/06/d020601fc88efdc3.html#:~:text=した%E3%80%82,から3.75%引き上げられる%E3%80%82

MUFG 三菱UFJ銀行 「通貨オプション行使判定用参考相場(対円)」https://www.bk.mufg.jp/report/yopt2023/2308.pdf

立命館大学衣笠国際教育センター 「Study Abroad Guide 2024」