オーバーツーリズムに揺れる京都市で新たな取り組みが始まりました。京都駅から清水寺や銀閣寺など主要観光地を直接結ぶ「観光特急バス」の運行です。訪日客から修学旅行生まで、国内外問わず多くの人々が訪れる古都。観光客と地元住民、その両者が利用する市バスで互いのすみ分けをはかり混雑緩和を目指します。
その路線は2系統。京都駅から清水寺の最寄りである五条坂を結ぶ路線と京都駅から銀閣寺前や祇園を結ぶ路線です。清水寺に向かう場合は、通常の市バスより10分から15分程度、時間短縮になるといいます。運賃は、一般的な料金の2倍にあたる500円。ですが、京都駅の停留所には長蛇の列が出来ています。
観光特急バス停留所(6月19日筆者撮影)
殺到する観光客への対策として、運行が始まった観光特急バス。京都駅から市バスで通学している筆者としても、混雑緩和に期待を寄せていました。しかし、観光客と地元住民のすみ分けにはまだまだ程遠いという印象を受けています。
そう感じる背景には、観光特急バスの仕組みが関係しています。まず、運行日が土休日に限られていることです。平日であろうと多くの観光客が訪れています。土休日の混雑緩和はよりニーズが高いともいえますが、通学や通勤で市バスを利用する地元住民が多い平日への手当ても必要だと感じます。ビジネスデーの市バスの混雑状況は、観光特急バス運行以前と何の変化もないといえるでしょう。
また、路線が限定的であることも大きいのです。今月から開始された観光特急バスは、特に混雑が激しい清水方面の混雑緩和を目指します。ですが、清水方面以外にも混雑する路線は少なくありません。筆者が通学で利用することもある路線は、二条城や北野天満宮、金閣寺方面をつなぐため、いつも多くの人であふれます。
まだまだ、改善の余地があると思われる観光特急バスですが評価できる部分もあります。本数の多さや運賃の先払い制には感激しました。通常の後払いの市バスと異なり、観光特急バスでは運賃を乗車時に払う仕組みがとられています。降車時、込み合っていてなかなか運賃箱にたどりつけない、両替できない、そんな心配がありません。より快適に利用できる仕組みだといえます。
長時間、満員状態のバスに乗っているとかなりの疲労感を覚えます。バスの利用客には、観光客と地元住民が混じり、両者とも高齢者や子ども連れの方も少なくありません。観光客が快適に京都を満喫でき、地元住民はスムーズに日常生活を送れるよう、互いにとって気持ちの良い環境が整うことに期待したいです。
運行が始まったばかりの観光特急バス。問題点を改めながら、京都の混雑を解消する一助に育つことを願っています。
参考記事:
15日付 朝日新聞朝刊(京都府・地域総合)22面「(関西リレーNOTE)「もっとおこしやす」ならば 京都総局・日比野容子記者/京都府」
4日付け 日本経済新聞朝刊(地方経済)10面「京都 観光特急バス発車 市が混雑対策」
参考資料:
京都市バス・地下鉄ガイド「清水寺・祇園・銀閣寺へ行くなら 観光特急バス」