韓国に次いで出生率の減少が大きいカナダ 問題視されていることとは

今月5日に厚生労働省が発表した2023年の人口動態統計調査の結果により、「合計特殊出生率」と「出生数」どちらも過去最低を更新したことが分かりました。1人の女性による一生の間の出産数を示す「合計特殊出生率」は1.20でした。また「出生数」は72万7277人で前年に比べて4万人以上もの減少となりました。

岸田政権も少子化対策に力を入れ始めました。ただ今回の対策はお金をばら撒いているだけのように見受けられます。09年にも当時政権を握っていた民主党がそれまでの児童手当より増額した子ども手当を導入し、現金での経済支援を強化しました。しかし、一時的な出生率の伸びは見られたものの、それ以降は減少傾向にあります。お金での支援には即効性があるように見えるかもしれませんが、根本の部分がグラグラなままでは長くは持ちません。他国でも金銭的な支援を試みた例はありますが効果はあまり見られていません。

その背景に「子どもの量と質」があるとされています。子どもが多くなればなるほど一人当たりにかけられるお金が減ってしまいます。そのため、たとえお金での支援があっても、出生数という「量」が増えるのではなく、個々の子どもの「質」を上げることに使おうとするのです。これが現金給付が出生率増加に直結していない理由ではないでしょうか。

年々急落し続ける出生率。この問題は日本だけではありません。筆者が留学しているカナダでも22年に出生率が最低水準に達しました。ちなみに出生率の減少は韓国に次いで主要国で2番目でした。新型コロナウイルス感染症を機に減少ペースが加速し22年の合計特殊出生率は1.33になっています。日本と同じように大都市はさらに深刻でバンクーバーの出生率は1.1にまで下がっています。CBCやGlobal newsなどといったカナダのメディアも出生率低下に対して問題視する記事を複数報道しています。

一方で、日本とは異なり人口そのものは右肩上がりです。多くの移民を受け入れることで、カナダは移民に頼りながら人口を増やしています。ただ、カナダ生まれの女性も移民女性も子供を出産する率は低下しています。このまま続けば人口の高齢化が危惧されます。

出生率が世界の最低水準で少子化対策に悩む韓国では、移民の受け入れ拡大に本腰を入れ始めました。しかし、先述したように移民大国であるカナダでさえ出生率低下に悩んでいます。移民で少子化問題が解消するようには思えません。

ユニセフ・イノチェンティ研究所の「20年調査の国別順位」による結果を見てみると、フランスは子どもの幸福度が高い上に、出生率が高いことが分かりました。フランスが長年にわたって進めてきた少子化対策は、日本でも効果が見込めるかもしれません。たとえば、育児費用のための所得税減税や個人に合わせた働き方の選択制度などです。また妊娠と出産にかかる費用が無料だというのも効果的なのではないでしょうか。

どの国でも低迷している出生率ですが、目先の単発的な対策を考えるのではなく、長い将来を見据え根本がしっかりとした取り組みを考える必要があるのではないでしょうか。

 

参考記事:

・6日付、朝日新聞デジタル、「【そもそも解説】岸田政権の少子化対策、これまでとどう違うの?」

・5月20日付、朝日新聞デジタル、「韓国「移民」受け入れ拡大 留学生、5年働けば永住に道」

・2023年2月20日、朝日新聞デジタル、「実は出生率の低下が続くフランス 「N分N乗」は少子化対策に有効?」

・18日付、日経クロストレンド、「衝撃の「出生率0.99」の東京 vs 1.60の沖縄 実際、赤ちゃんが減っているのは?」

・2024年1月31日付、Global News、「Canada’s fertility rate has hit its lowest level in recorded history」

・2024年1月31日付、CBC News、「Canada’s 2022 fertility rate lowest on record, StatsCan reports」

・2023年1月24日付、東洋経済オンライン、「日本人が知らないフランス「少子化対策」真の凄さ 岸田首相「異次元の少子化対策」に必要なこと」

 

参考文献:

・5日、厚生労働省、人口動態調査、「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」

・2023年9月29日、日本総合研究所、「出生率が1.5を超している先進国のプロフィール:子どもと女性の視点から」

・2020年11月10日、財務省、「家族政策が出生率に及ぼす影響」、財務省財務総研「人口動態と経済・社会の変化に関する研究会」第2回