日本で止まらない韓流ブーム 遠く離れたカナダにも到来⁉︎

日本では2020年ごろから韓流ブームが再熱しています。新型コロナウイルス感染症によるライフスタイルの変化から「巣ごもり需要」が急激に拡大しました。人々のネット通販や出前サービスなどへの関心が高まる中で急成長したのが米動画配信サービス「Netflix」。世界を席巻した「愛の不時着」や「イカゲーム」の人気は日本にも到来しました。ドラマ内に出てくる韓国料理も多くの日本人に刺さりました。筆者もコロナ期間中に数多くの韓国ドラマを視聴し、ものの見事に韓国文化にハマりました。

一方、海外でも21年に米ビルボードでBTSの「Butter」と「Dynamite」が1位を獲得するなど急速にK-popの人気が広がっています。

アメリカの隣国カナダではどうでしょうか。筆者が滞在している現地の視点からお伝えします。

まず念頭に置いておきたいのは、カナダが多文化共生であるということです。21年にカナダ統計局が実施したカナダ国勢調査によると、人口の4分の1近く(23.0%)に当たる830万人以上がカナダへの移民でした。バンクーバーで生活していますが、人とすれ違うたびに各国の言語が耳に入ってきます。バンクーバーに来て、真っ先に感じたのは「世界中の文化と触れ合うことができる」ということでした。

どこを歩いていても韓国料理店は目に入ります。加えて、韓国食品を販売している大型スーパーマーケットもバンクーバーには複数あります。それゆえにカナダ人にとって韓国文化は馴染みのあるものなのではないかと思われましたが、実際にお店へ行ってみるとアジア圏の人々が大半です。欧米系の人を見かけることもありますがごく少数です。

筆者が下宿しているノースバンクーバーには韓国料理店はあるものの、韓国食品を含むアジア食品専門のスーパーマーケットはありません。そのためか、この地域でのアジア人遭遇率はグッと狭まります。カナダでの韓国の食文化に対する人気度は、日本と比較するとそこまで高くないのかもしれません。

しかし、韓国ドラマに対する注目度は他国と同じように高いようです。Netflixで配信された「イカゲーム」や「ザ・グローリー」はカナダでもトップ10リストに入ったことがあります。このリストは前週の月曜から日曜までの合計視聴時間を基準に選出され毎日更新されています。

韓国政府が自国の文化を広めようとする動きも見られます。昨年の4月に国賓として尹錫悦大統領が訪米しました。そこで米上下両院合同会議での演説の中でもNetflixの韓国ドラマやK-popアイドルについて言及し、一種の「宣伝」のような印象さえ受けました。 また、Netflixは23年から26年の間に韓国ドラマなどの「Kコンテンツ」に米ドルで25億ドル(約3338億円)を投資することを表明しました。力を入れている効果からか、今年に入ってからも「涙の女王」がカナダを含む世界68カ国でトップ10にランクインしました。

カナダでの韓流ブームについては、韓国文化が急激に流行っているというものよりも韓国ドラマの限られた作品が好評だったために、大多数から視聴されたことに伴う一過性のものだと筆者は思います。 ただ、韓国ドラマとNetflixの親密な関係により、カナダでも今後どのような展開があるのか気になるところです。

 

参考記事:

・2023年4月28日付、朝日新聞デジタル、「「ホワイトハウスはBTSが先だったが…」 韓国大統領が米議会演説」

・2023年4月26日付、朝日新聞デジタル、「ネトフリ、韓国ドラマなどに3300億円投資 CEOと大統領が会談」

・2023年4月25日付、日本経済新聞、「NetflixのCEO「韓国に25億ドル投資」尹大統領に表明」

・2020年11月25日、読売新聞オンライン、「グラミー賞候補にBTSの「ダイナマイト」…最優秀ポップパフォーマンス部門」

・4月3日付、Kstyle、「韓国ドラマ「涙の女王」が世界でヒット中!NetflixグローバルTOP10の非英語部門で1位に」

・2023年4月11日付、日刊ゲンダイデジタル、「(1)第4次韓流ブームの到来 韓国エンタメ界×Netflixの戦略が「イカゲーム」で結実」

・2021年11月22日、ハンギョレ新聞、「「イカゲーム」追い抜き…ネトフリ韓国ドラマ「地獄が呼んでいる」公開翌日1位」

 

 

参考文献

・CBC News、2023年5月24日、「How South Korean entertainment became a global phenomenon | About That」(最終閲覧日:2024年6月11日)

・Statistics Canada、The Daily、2022年10月26日、「Immigrants make up the largest share of the population in over 150 years and continue to shape who we are as Canadians」(最終閲覧日:2024年6月11日)

・大正大学地域構想研究所、2021年10月「ニューノーマル時代における生活様式の変化とアフターコロナの新しい潮流についての考察」、北條規(最終閲覧日:2024年6月11日)