日本国憲法が指す「法の下の平等」とは 佐田寅子のセリフから現代の教育機会について考える

最近の日課はNHKの連続テレビ小説『虎に翼』を観ることです。『虎に翼』は今年4月1日から放送が続いています。

主演を務める伊藤沙莉さんが、日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ佐田寅子(旧姓:猪爪)を演じています。主人公のモデルは日本初の女性弁護士の一人で、その後初の女性判事となった三淵嘉子さんです。

先週放送された第9週(「男は度胸、女は愛嬌?」)のなかでは日本国憲法が公布され、新しい社会が動き出しました。

 

主人公寅子の家庭は軍需産業を請け負っていたため、戦時中は仕事に困ることはありませんでした。しかし、敗戦で失職する中で寅子の弟、直明は一家を支えるため大学への進学よりも働くことを選択しようとします。

そんな直明に向けて言った寅子の言葉が印象的でした。

寅子は日本国憲法第13条と第14条を弟に説明します。

 

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

この国は変わるの

 

私たちは一人一人平等で、尊重されなきゃいけない

 

男も女も平等なの。男だからってあなたが全部背負わなくていい。そういう時代は終わったの

 

こうした寅子の言葉を受けて直明は再び大学進学を志すようになります。

戦後80年、日本国憲法公布から79年目を迎えた2024年の社会はどうなったでしょうか。

朝日新聞の記事によると、1986年の男女雇用機会均等法施行以降、女性の社会進出が広がるにつれ、大学進学率は上昇しているそうです。2023年の進学率は男子60.7%、女子54.5%とジェンダー間の差は縮小していると言えます。筆者は実際に大学に通う中で女子学生が極端に少ないと感じたことはありません。

ただ、難関国立大とされる旧帝国大学における女子の割合は2〜3割で、すべての国立大学の合計でも女子は4割程度にとどまっています。オックスフォード大学やハーバード大学など海外の上位校の多くはほぼ半数が女子学生であることを踏まえると、大学進学に関して、日本には依然として男女間に差があると考えられます。

 

さらに、地域差もあると言われています。東京と京都は男女共に7割以上の進学率でしたが、東北や九州では3〜4割と低かったそうです。地方出身の女子が大学進学を目指す場合、「地域格差」と「男女格差」という二つの問題が絡んできます。

 

筆者の周囲には実際に親から、「私立の大学は学費が高いから国公立大学に行ってほしい」、「私立に進学する場合は県内の大学にしてほしい」と言われている友人もいました。

女子の大学進学率が低いことには、親の「投資意欲」に男女差があることも指摘されています。現状では、大学卒業後の女性のキャリアは結婚や出産などの影響を受けやすいため、親にとって県外進学の「投資」に見合った形で就職後の収入や雇用環境といった「対価」を得られる見通しを立てにくいと考えられています。そのため、無意識のうちに男子の学費を優先してしまうとの見解があります。

 

寅子が生きた時代と比較すると、女子学生への教育機会も開かれていると言えるかもしれません。しかし、大学進学率だけでも依然としてジェンダー間で差があります。ここには個人の意思とは別に、親や社会全体の認識も関係しているのです。

 

男女関係なく、学ぶ意欲を持った個人の意思が尊重される社会になることを切望します。『虎に翼』で描かれる時代は現代よりも性別での分業が徹底しており、与えられる機会にも限りがありました。「法の下の平等」とは抽象的な表現であり、受け取る人や時代背景によって変化し得るものです。作品で描かれた時代背景を知ることで、当時はどんな社会だったのか、またどのように変化してきたのか考えることができると感じています。

 

引き続き、『虎に翼』から目が離せません。

 

 

参考記事
5日付 朝日新聞朝刊 (大阪13版)2面(総合)「女子の進学 消えない壁」

参考資料:
衆議院 「日本国憲法」https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm#
NHK 「虎に翼」https://www.nhk.jp/p/toranitsubasa/ts/LG372WKPVV/