お祈りメールを「エール」に 不採用通知が繋ぐ未来

「お祈りメール」と呼ばれる不採用通知。末尾が「今後の活躍を心よりお祈り申し上げます」といった定型文書で締めくくられるため、このような名前がついています。「〇日後までに連絡がなければ不採用」とし、不合格者に対する選考結果の連絡をしないことから、「サイレントお祈り」と呼ばれる事例もあるそうです。

 

このような状況を見ると、不採用者に対する対応は素っ気ないものと考えられがちです。しかし、不採用者に改善点を伝えたり、他社で最終面接まで進んだ実績を自社の採用評価に反映させたりと、不採用者にも積極的に関わろうとする企業もあります。

 

経理代行サービスを手掛ける「メリービス」(東京)は、不採用とした学生への連絡に、改善点を書き添えています。また、人材サービス業の「ウィルグループ」(東京)も、面接で不採用とした全学生に対し、面接担当者の評価を添えて連絡しています。

 

これらの背景には深刻な人手不足があり、中途採用の人材を確保しやすくしたい思惑があるようです。学生に対し親身な姿勢を示すことで、他社と差別化して転職の際には自社を選んでもらおうというのです。

 

また、「お祈りメール」が届いたことをアピールできる場合もあります。

 

ABABAは、「不採用後も、企業(人事)と学生の関係性を良好で継続的なものに。」をミッションに、最終面接まで進んだが内定に至らなかった学生に、書類選考や一次選考を免除する企業を紹介するサービスを始めています。

企業が採用できなかった学生をABABAのプラットフォーム上に推薦するか、学生が最終面接まで進んだことが分かる資料を提出することで、企業と学生のマッチングを図るものです。最終面接に進んだという学生の努力と実績を評価するわけです。これまでに、累計4.5万人以上の学生と1000社以上の企業の利用実績があり、就活に費やした時間を有効活用したいという学生と、優秀な人材を効率的に確保したいという企業のニーズにマッチしているといえるでしょう。

 

政府は、採用選考活動の開始を6月1日とするように要請していますが、5月15日時点で大学生の内定率は78.1%に達し、就職活動の早期化が目立っています。一方で、内定を得ている学生でも6月以降も活動を継続する予定の人は6割を超えており、まだ多くが就職活動の真っ最中であることも伺えます。

 

筆者は就職活動でたくさんの学生や社会人の方にお会いするなかで、周囲と比べて自分の不甲斐なさに落ち込んだり、まだ見えぬ将来に不安になったりすることがあります。「自分らしい進路を」「納得のいく選択を」とよく聞きますが、何が自分らしいかすらもよく分からなくなり、どんな決断をすればいいか悩みに悩む日々です。

そんな中でも、不採用者に今後の糧になるようなメッセージを送ったり、就活の努力そのものを評価したりする企業やサービスを知ったことで、内定がゴールではないという当たり前の事実を再認識しました。

 

2025年卒の学生にとっては、自分の将来について期限付きで真剣に向き合う時期。社会人になってからも将来について思い悩むことはあるのでしょうが、まずは今この日々に全力で取り組めればと思います。

 

【参考記事】

2024年6月1日付 読売新聞夕刊〔東京〕1面「企業 就活後も学生に視線 人手不足 転職に期待 大卒選考解禁」

2024年6月1日付 朝日新聞デジタル「新卒採用が解禁 学生8割すでに内定」

2023年9月6日付 日経産業新聞 11面『不採用通知「お祈りメール」 新たな企業と出会う糧に 受信、落ち込みすぎず(就活探偵団)』

【参考資料】

就職活動の「過程」が評価される新サービス -ABABA

大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期について -厚生労働省

就職プロセス調査(2025年卒)「2024年5月15日時点 内定状況」  -株式会社リクルート

株式会社ABABA  - coki

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