オーバーツーリズムが激しい京都。バスや電車といった公共交通機関を利用する市民に、多大な影響を与えています。そんな中、JR西日本の山陰本線で面白い工夫がありました。
山陰本線は、京都駅から日本海側を走り山口県下関市の幡生(はたぶ)駅へと続く路線です。その中でも特に、京都駅から南丹市の園部駅までの区間に付けられた愛称として嵯峨野線というものもあります。この2つを合わせて、嵯峨野山陰線とよばれています。
嵯峨野山陰線の出発駅である京都駅の乗り場付近(30-33番ホーム)では、常に多くの人でごった返しています。というのも嵯峨野山陰線は京都屈指の観光地である嵐山にアクセスがよく、多くの海外観光客が利用します。私もよく乗りますが、大きなスーツケースを持った海外観光客がたくさんいて車内は様々な言語が飛び交い喧騒に包まれている印象です。
そんな嵯峨野山陰線には、ある悩みがありました。京都駅の改札から嵯峨野山陰線のホームへ向かう通路が1つしかなく、どうしても手前の乗り場で人が溜まってしまうのです。駅員や放送で奥の方へ行くようにアナウンスがありますが、なかなか改善されません。そんな中、JR西日本は革新的なアイデアで乗客を誘導します。
ある日いつものように嵯峨野山陰線を利用しようとしたら、ホームの乗り場手前5mほどの場所に電光掲示板が設置されていました。
1枚目は、ありきたりな呼びかけでした。ただ2、3枚目で「手裏剣をたどって忍者の正体を暴け!」という好奇心を揺さぶられるようなものが表示されました。
実際にホーム乗り場に手裏剣のマークが複数あり、どんどん私達を誘導しているかのように連なっています。
奥のほうへ行くと、そこには立派な忍者の姿がありました。見つけたときには幸福感に包まれ、奥の方まで歩いてきた甲斐があったと実感しました。恐らく、子どもや海外からの観光客はこの忍者を見つけたら写真を撮りたくなるでしょう。
このようにして、JR西日本は車内の混雑状況をできるだけ均一化しようとしています。伝え方は、言葉だけではありません。人の好奇心や感情に訴えかけようとする取り組みに、頭が下がりました。あの忍者が益々人気になり、車内環境が改善されればまさに一石二鳥です。