昨年10月、イスラム過激派組織ハマスがイスラエルに攻撃を開始してから8ヶ月が経とうとしています。イスラエルによる報復攻撃により多くの民間人に死傷者が出ているにもかかわらず、紛争の行方は依然として予断を許さない状況です。
本日は、新聞各社が社説でこのガザ紛争についてどのようなスタンスをとっているのか読み比べしました。
浮かび上がってきたのは、「誰に」訴えるかという違いです。オランダ・ハーグにある国際司法裁判所ではイスラエルに対して、ガザ地区南部ラファでの軍事作戦停止の暫定措置命令が出されました。直近のガザ紛争に関する社説では、朝日新聞と毎日新聞が同じ論調でイスラエル首相ネタニヤフ氏に即時の停戦を訴えています。朝日は、「パレスチナ国家の樹立を否定し、パレスチナ人の命を軽んじる独善的な姿勢こそが、外交上の孤立を深めている現実から目をそらしてはならない」とネタニヤフ氏に諭しています。毎日は、「ネタニヤフ氏はハマスとの停戦を決断すべきである」とシンプルに停戦を主張して社説を締め括っています。
他方で、読売新聞と産経新聞は、日本外交に訴えています。読売は、「人命や人権の尊重といった普遍的な価値を重視する観点から、関係国に戦闘停止を強く働きかける外交を展開すべきだ」と日本が重んじてきた価値観を踏まえた外交を呼びかけます。産経新聞は、紛争が激化する段階で「イスラエルやアラブ諸国と良好な関係を持つ日本にも大きな役割があるはずだ」と述べ、日本の役割を強調しました。
「国際社会はガザの停戦への道を探るべきだ」と広く国際社会に解決の模索をするよう提唱するのは、日本経済新聞です。同時に「終わりのない不毛な戦いは、国際世論とイスラエルの間の溝を広げるだけだ」とも述べ、イスラエルに地上作戦を中止するよう訴えています。
見てきたように、同じガザ紛争の問題でも各社の主張にばらつきがあり非常に興味深い内容になっています。各社の社説と同じくらい、あるいはもっと多様な意見が国際社会にはあることでしょう。
朝日新聞デジタル「(社説)司法裁の命令 ラファ攻撃は許されぬ 」(2024年5月26日)
毎日新聞「ラファの攻撃停止命令 順守はイスラエルの義務 」(2024年5月29日)
読売新聞オンライン「[社説]ガザでの攻撃 人道危機の拡大を傍観するな 」(2024年5月26日)」
日経電子版「[社説]ラファ侵攻の惨禍を避けよ 」(2024年5月13日)
産経新聞「ハマスの攻撃 戦火の拡大阻止に全力を 」(2023年10月11日)