政治資金規正法改正質疑入り 今後の行方は

気付けば5月も残すところもうあと僅かとなり、新歓シーズンで賑わいを見せていたキャンパスはようやく落ち着きを取り戻しました。筆者がかねてより所属している管弦楽団にも晴れて数十名の新入生が新たに加わりました。

筆者が所属する管弦楽団は年に2回の定期演奏会を中心に活動し、長期休みには5泊6日の合宿が開催されたり、学園祭や音楽祭で演奏したり、一年を通して様々なイベントが予定されています。

著名な常任指揮者のもとで活動できることもあり、大学生活の大半を音楽に捧げているという部員も少なくありません。今年も新入生の多くは経験者で、幼いころから楽器を続けてきたという実力者も多数加わりました。

しかし、大学オケに憧れを抱く全員が入れるわけではありません。大学3年生になり、入部を検討する下級生の相談にのる機会が増えた今年、印象的だったのはやはり、金銭的な不安から部活動に加わることをためらう後輩学生たちでした。

一般的なサークル活動に比べ、文化系とりわけ音楽活動を伴う団体は経済的な負担が大きくなる傾向があります。いくつか理由はありますが、楽器の修理費、コンサートホール等の施設利用料、合宿の回数の多さと日数の長さ、プロの音楽家をお招きするための謝礼などが主な要因です。学校や楽団によっては海外遠征まで伴うため、年に百万円ほどかかる場合もあるそうです。

年に数十万円はかかる活動費をいかにして賄うか、方法は部員それぞれに委ねられています。筆者はリゾート地でのアルバイトや夜勤などでなんとか活動を続けています。部活動を通して何にも代えがたい経験が得られるのなら、多少の心身の負担は気になりません。

とはいえ入部した当初は、決して安くはない部費を納めることにかなりの抵抗がありました。それでも年度末に収支報告書が公開され、支払った部費がどのように使われたのか、1円単位で公開されたことによって納得がいき、高額な部費も活動で得られる成果の対価として受け入れられるようになりました。

22日、自民党派閥の「政治とカネ」の問題を受け、政治資金規正法改正案を議論する衆院政治改革特別委員会での審議が始まりました。パーティー券購入者の公開基準額を「10万円超」とした自民党案について、自民党の藤井比早之氏が「現行法では『その他の収入』の公開基準が10万円超となっており、切りがよく分かりやすい基準額に設定した」と説明したことや、政活費の使途公開について自民党の鈴木馨祐氏が「使途公開になじまないものもあるのが実情だ。政治活動の自由やプライバシー機密への配慮も大事だ」と発言したことなどについて、SNSでは批判や疑問の声が相次いでいます。

政治資金パーティーの公開基準や政策活動費の見直しをめぐり、それぞれ異なる立場をとっている与野党の議論は依然として平行線を辿っています。政治資金パーティーそのものや政策活動費を禁止するべきという立場の党もあります。

そもそも政治資金とはなんでしょうか。規制法には民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であると書かれています。果たして人民の、人民による、人民のための政治に、政治資金はつかわれてきたのでしょうか。

誰のための、何のための政治資金パーティーであり、政策活動費なのか、政治家は改めて自身に問うてほしいと思います。そして今後は後から検証することすらできない制度がまかり通ることのないように、国民ひとりひとりの積極的な政治参加や、ジャーナリズムによる徹底した権力監視が求められます。

 

参考資料:
23日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「規制法 与野党が5法案 衆院委審議入り 自民と他党 深い溝」関連記事2,4
23日付 読売新聞朝刊(東京13面)4面(政治)「政活費 与野党に隔たり 規制法改正 審議入り」
24日付 読売新聞朝刊(東京13面)1面「政活費 領収書は非公開 自民案 規制法改正質疑開始」関連記事2,4