総務省の労働力調査によると、日本の就業者数は6747万人(2023年平均)。その約90%にあたる6076万人が雇用者(労働者とほぼ同義)です。
多くの人が労働の対価として得た賃金をもとに生計を立てており、労働は私達の生活に密接に関わるものと言えます。
今学期は労働法ゼミに所属し、春から就職活動を本格化させたこともあり、筆者も「働く」ということについて考える機会が多くなったと感じます。
日本型雇用慣行の変容や深刻な人手不足など、労働を取り巻く環境は急速に変化しつつあり、これまでの「常識」もアップデートを迫られています。
今回は、労働に関わるトピックを概観します。
◯日本型雇用慣行の変容
長期雇用慣行や年功的処遇を特徴とする日本型雇用慣行。日本企業では従来、新卒一括採用や終身雇用、年功序列、職種・勤務地を特定しない労働契約が当然のものとされてきました。
しかし、これらの慣行は徐々に変化しつつあります。
◯転職の活発化
近年、転職市場は活発化しています。
マイナビが実施した「転職動向調査2024年版(2023年実績)」(※)によると、23年の20〜50代男女の転職率は7.5%。16年以降で最も高かった前年(7.6%)と同水準となりました。20代男性では13.6%に上ります。
転職率の上昇は、日本型雇用の最大の特徴とされる長期雇用慣行の変容を示しています。
◯多様な正社員像へ
職務内容などを特定しない「メンバーシップ型雇用」も日本型雇用慣行の特徴とされます。
しかし、会社の裁量で部署や勤務地を指定され、企業人としての命運を左右することもある「配属ガチャ」への忌避感もあり、職種指定の「ジョブ型雇用」や、勤務地を限定した「エリア総合職」の導入も進んでいます。
良くも悪くも均一だった正社員像は、多様な姿に細分化されつつあります。
◯2024年問題
最近ニュースでも頻繁に取り上げられる「2024年問題」。
働き方改革関連法による時間外労働上限規制の適用が5年間猶予されていた建設事業、自動車運転業務、医師など等についても、今年4月から規制が強化されたためで、深刻な人手不足が懸念されています。
NX総合研究所の試算によると、物流業界では、24年度に約14%、30年度には約34%の輸送能力が不足するといいます。
こうした中、日本郵便がヤマト運輸との協業に踏み切るなど物流大手の連携が進むほか、自動運転技術の開発など、DX化に向けた取り組みも進んでいます。
建設・物流・医療は私達の生活に必要不可欠な分野です。働く人たちの待遇改善と生活基盤の維持の両立が求められる難しい局面を迎えています。
時代にとともに変化する「労働」。
社会が急速に変化する中、時代に合った「働き方」が求められています。
(※)株式会社マイナビ「転職動向調査2024年版(2023年実績)」
◯調査対象:
・正社員として働いている20代〜50代の男女のうち、2023年に転職した者
◯有効回答数:1500人
◯調査方法:インターネット調査
◯実施期間:
・スクリーニング調査:2023年12月13日(水)〜12月15日(金)
・本調査:2023年12月15日(金)〜12月18日(月)
参考記事:
日経電子版「日本郵便と西濃、トラック1万台共同運送 他社にも開放」(2024年5月6日)
日経電子版「物流2024年問題、世界の新興参画 自動運転やロボ実装へ」(2024年5月1日)
1月5日付 読売新聞朝刊8面(経済)「物流革新〈1〉宅配 ライバルと組む 運転手不足深刻・中継輸送も」
日経電子版「転職希望者1000万人突破 売り手市場映す 23年7~9月」(2023年11月27日)
参考資料:
株式会社マイナビ「転職動向調査2024年版(2023年実績)」
持続可能な物流の実現に向けた検討会「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」
ヤマトホールディングス株式会社「ニュースリリース|日本郵便とヤマト運輸によるクロネコゆうパケットの取扱開始」
参考文献:
水町勇一郎『労働法〔第10版〕』(有斐閣、2024年)