今、オレンジジュースが危機的状況にあります。誰もが親しんできた飲料ですが、いくつかの要因が重なり日本国内での製造が危ぶまれているのです。
販売休止の背景には、主要産地であるブラジルでオレンジの不作が続き、価格が高騰したことに、円安が加わります。日本はジュースに使用するオレンジ果汁をほぼ全量輸入に頼っているため、原産地での不作で大きな打撃を受けます。ブラジルでは病害や天候不順で収穫量が大幅に減少しているとされます。
2021年の果汁の輸入量は前年の半分ほど、3万3948キロリットルに激減しました。各国の企業が果汁を競り合う状況に円安が重なったことで、23年の輸入価格は1リットルあたり491円にまで高騰しました。これは20年の2倍近くになるそうです。飲料メーカーの担当者によると、この状況が数年は続くと見られています。
輸入オレンジ果汁の減少、価格の高騰を受け、各企業は販売休止や値上げの動きを見せています。アサヒ飲料は23年12月から「バヤリースオレンジ」(1.5リットル)、雪印メグミルクは同年4月から「Doleオレンジ100%」(450ミリリットル、1000ミリリットル)の販売を休止しています。森永乳業は6月から「サンキスト100%オレンジ」(200ミリリットル)を10円値上げし、税別130円で販売するようになります。しかも原料の在庫がなくなり次第、販売を休止すると発表しています。
モスフードサービスは今月7日、22日から全国のモスバーガーで一部ドリンクを値上げする見込みです。その中に「100%オレンジジュース」も含まれており、単品Sサイズが250円から290円に、Mサイズのドリンクが付くセットの場合、セット料金プラス70円になります。
すでに販売を休止している事態にも関わらず、筆者はオレンジジュースが存続の危機にあることを知りませんでした。物価高のニュース報道を目にしても、「買えなくなることはないから大丈夫」と受け止めていました。オレンジジュースは子どもの頃からよく飲んできたもので、スーパーや自動販売機、一般のお店でも売っていることが当たり前でした。日常に溶け込んでいるからこそ危機的状況が見えにくくなっていたとも感じます。
ただ、オレンジジュースの販売休止、値上げといったなか、コロナ禍のマスクのように多くの人買い占めに走り、在庫がなくなるという事態は避けたいものです。それでは、ただでさえ足りないため、みんなで大切に味わうべき製品が市場から一気に消えてしまいますから。
今回の一連の記事で、オレンジジュースに使用する果汁の多くが輸入のものであり、5割以上をブラジル産のものに頼っていることを知りました。グローバル化で産業が外国と深い関わりを持ち、他国の状況は無視できないものになっています。世界の現状や歴史を知ることは自国について考えることに繋がると考えられます。まずは身近な問題から世界を考えてみませんか?
参考記事
7日付 日本経済新聞デジタル 「モス、コーヒーやオレンジジュース値上げ 22日から」
11日付 朝日新聞朝刊(大阪13版)7面 「オレンジジュースが消える? 高騰で次々休止」
21日付 読売新聞朝刊(大阪13番)7面 「オレンジ飲料ピンチ 値上げ、販売休止 産地ブラジルで不作」