前回の記事でカナダの大麻合法化についてお伝えしましたが、先週20日には北米など各地で「大麻の日」がありました。筆者の暮らすバンクーバーでも大麻を吸うために多くの人が浜辺や公園に集まったとされています。大麻を喫煙することが祝いの日として成立しているカナダ社会にまた驚かされました。
さて今年も桜が散る季節となりました。桜の時期はあっという間に過ぎてしまいますが、私たちの心を和ませてくれ、日本の伝統を誇りに思う瞬間でもあります。
実はカナダでも桜を見ることができるのです。バンクーバーでは3月末には街中で満開となり、「桜フェスティバル」も開かれていました。夜になるとライトアップされ、多くの人で賑わいます。ちなみにバンクーバーでは屋外での飲酒は認められていませんが、期間限定で屋外飲酒が許されるエリアもあります。お酒を飲みながら花見をすることもできるのです。ただ、お酒はコンビニやスーパーマーケットでは買えず、酒屋でしか扱っていません。飲酒エリアは厳しく規制されているのに対して、大麻を吸うエリアは制限されていないことには疑問を感じます。
ところでカナダの桜はどうやって日本から運ばれてきたのでしょうか。調べてみると深い歴史がありました。
カナダの各都市にはそれぞれの歴史がありますが、バンクーバーでは1930年代に当時の日本を代表する港湾都市であった神戸市と横浜市が500本の桜を、市の中心部にある海に囲まれたに設置された第1次世界大戦の「日系カナダ人戦没者慰霊碑」に追悼の意を込めて寄贈しました。慰霊碑には、権利拡大のために義勇兵としてカナダ軍に志願し亡くなった日系人の名前が刻まれています。
歴史を振り返っていて、高校生時代に英語の授業で習った「バンクーバー朝日」を思い出しました。1914年に日系カナダ人によって構成された野球チームです。当時の日系人は偏見と差別を受け、低賃金かつ長時間の労働を強いられていました。野球だけが息抜きだったのも束の間、太平洋戦争中にカナダ政府によって強制収容されてしまい「バンクーバー朝日」の選手がもう一度同じ場所に集まることはありませんでした。この実話は「バンクーバーの朝日」として映画化されています。
この歴史を紹介したからといって、カナダに対しての批判というわけではありません。ただ、今では当時の日本とカナダの関係からは想像できない良好な関係となり、桜という日本の文化をカナダが受け入れていることを嬉しく思います。
多くの民族が集まっている国に暮らすことで、いくつもの国に訪れているような気さえもします。まだまだ、この地で学べることは多いようです。
参考記事:
・2022年12月20日付、読売新聞オンライン、「[日系人の記憶 強制収容80年]カナダ 荒れ地で一から…「開拓時代のような生活」」
・2022年11月3日付、日本経済新聞、「カナダ、移民2割拡大へ 25年に年50万人 理系人材に重点」
・2022年9月3日、朝日新聞デジタル、「笑顔の人生展開催へ 東大院生がたどる日系カナダ人の100年 美浜」
参考文献:
・2021年5月31日付、「さくら:日本・カナダ関係を彩る歴史」、在カナダ日本国大使館
・National Association of Japanese Canadians、「日系カナダ人の歴史」
・ELEMENT、「The Vancouver Asahi」、啓林館