先日、空手道の大会に出場しました。団体形という3人の動作を合わせる種目です。分かりやすくいうとシンクロナイズドスイミングのようなものです。勝負事ですから、負けるわけにはいきません。練習に励み、最善の状態で当日を迎えたつもりでした。しかし、落とし穴が待ち構えていました。入場の練習をしておらず、バラバラになってしまったのです。練習してないことは本番で出せないことを痛感しました。
5月23日、北海道鹿追町の陸上自衛隊然別演習場で誤って実弾を発射したため2名が負傷する事故が起きました。本来、空砲を使用するところを、弾薬を管理する部隊に実弾を請求してしまいました。そのあとも弾の点検作業が十分に行われず、このような事故につながりました。空砲を撃つため銃口に取り付けた特殊な器具が実弾の発射で破損し、それが周囲の隊員に当たり負傷したとみられます。
この事故には、許しがたい過失が多くみられます。そもそも弾の請求を間違えることがあってはいけないでしょう。また、自衛隊員なら誰しもが分かる弾の違いを見抜けなかったことも問題です。隊員らは「空砲だと思い込んでいた」と言っているようですが、扱っているのは人の命を簡単に奪うことのできる武器です。その意識が薄れているように感じてなりません。
筆者は自衛隊の訓練について詳しくありません。そのため、疑問に思うこともありました。それは実弾による負傷者が出なかったことです。敵の攻撃に対する応戦なのであれば死傷者が出てもおかしくないような気がしました。自衛隊広報室に確認したところ、「応戦と言っても敵の命を狙うのではなく、敵の動きを抑えるものもある。想定する事態によって演習方法も変わる」とのことで、今回の想定については「詳細は調査中」ということです。もし、敵の命を狙う想定していたのであれば、死者が出ていたことになります。
事故から10日たった今も調査は続き、並行して訓練は行われています。演習場の周辺住民は気がかりで落ち着かないでしょう。国民の信頼を得るためにも、早期の原因解明、再発防止策を立て、抜かりない体制を築かなくてはなりません。このままの体制、心構えで訓練を続けていると、いざ非常事態に直面したときに大きな被害を受けるのは自衛隊員自身です。無事に生きて帰ってくるためにも、本番のように訓練してもらいたいものです。
参考記事:
2日付 朝日新聞 13版 29面 『空砲のはずが… 自衛隊、実弾で撃ち合い』
5月25日付 日本経済新聞 35面 『訓練で使用、全て実弾、陸自、誤射79発』
5月27日付 読売新聞 『空包の調達部隊 誤って実弾提供』