近年、日本の伝統工芸品や伝統的工芸品が、国内外からの注目を集めています。今月初旬に、岸田首相は9年ぶりとなる国賓待遇で米国を訪れました。現地時間9日の夜には夕食会が開催され、岸田首相から「輪島塗のコーヒーカップ」、裕子夫人からは「高岡銅器のアクセサリー」が贈られました。また、ミラノで開催されている世界最大規模の祭典「ミラノデザインウィーク」では岡山県の「備前焼」、秋田県の「大館曲げわっぱ」といった伝統工芸品が出展されています。
それでは、伝統工芸品と伝統的工芸品とはそれぞれどういったものを指すのでしょうか。伝統工芸品とは、伝統的な技術・技法によって、職人、匠の手作業で作られ、日常生活に使われるもののことを総称し、全国で1300種類を超すといいます。
一方の伝統的工芸品は、経済産業省が以下の5つの項目を満たし、法律に基づき指定を受けたものとして定めています。
- 主として日常生活の用に供されるもの
- その製造過程の主要部分が手工業的
- 伝統的な技術又は技法により製造されるもの
- 伝統的に使用されてきた原材料が主に用いられ、製造されるもの
- 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの
こうした厳しい基準に合格した伝統的工芸品は、241種類(23年10月26日時点)あります。
工芸品離れは深刻化しています。伝統的工芸品産業振興協会によると、現状は後継者不足や原材料の確保難など多くの問題に直面しています。さらに昭和30年代からの高度経済成長や生活様式の変化も大きな要因となっているといいます。
先日、筆者は甲府市で400年以上にわたって伝承され、伝統的工芸品とされる『甲州印伝(鹿革に漆で模様づけする伝統工芸)』の財布を購入しました。購入して数ヶ月ですが、手に馴染むつくりになっていて、使いやすい財布の印象を受けています。伝統工芸と聞くと、「芸術品」という印象が強く、高価格で手が出しにくい印象を持っていました。しかし、実際には若者にも興味を持ってもらえる商品のバリエーションがあり、手の出しやすい価格帯の商品が増えています。時代に合わせた商品として生まれ変わってきているのです。
海外のハイブランド品や安価な合成皮革の製品も魅力的ですが、伝統的手法を活かした商品の多くが、日本人のモノを長く大切に使う精神を踏まえて作られたということを聞いたことがあります。様々な場所で、認知度を高めるイベントが開催されています。ぜひ長い伝統に裏付けられた日本の工芸品に注目していってほしいと思います。
【参考記事】
日経電子版「バイデン氏、岸田首相にビリー・ジョエルのレコード贈る(4月10日)」
朝日新聞デジタル「首相がバイデン氏にプレゼント 輪島塗やマリオ、『ビースト』同乗も(4月10日)」
19日付 読売新聞夕刊(4版)8面「日本の伝統工芸 来場者高い関心 ミラノデザインウィーク」
【参考資料】