国土交通省は先月26日、2024年の公示地価(1月1日時点)を公表しました。
道内の地価の上昇率は、住宅地で4.4%(前年7.6%)、商業地で5.1%(同4.9%)、工業地で5.3%(同4.7%)となりました。
住宅地の地価上昇は鈍化しているものの、全体として高い伸びを維持しており、今後の発展への期待が伺えます。
一方、用途別の地価下落率全国ランキングのワースト10には夕張や室蘭の地点が含まれるなど、道内でも明暗が分かれています。
今回は、ここ数年間の公示地価をもとに北海道の現状を探ります。
◯リゾート開発とインバウンド
今や世界的なスキーリゾートとなったニセコエリア。その一角である倶知安町では、外国人富裕層向けの高級別荘や大型コンドミニアムの建設が相次ぎ、ここ数年で地価は跳ね上がっています。
19年と20年にはJR倶知安駅近くの商業地「倶知安町南1条西1丁目40番1外」の上昇率は50%を超え、全国で最も高い上昇率となりました。
ただ、同地点の上昇率は足元では10%を下回っており、以前に比べて落ち着きを見せています。
代わりに人気を集めているのが、富良野です。ラベンダー畑やドラマ「北の国から」の舞台としてかねてから有名な観光地ですが、近年はスキーリゾートとして外国人にも人気です。
別荘やコンドミニアム用地などの需要の高まりを受け、「富良野市北の峰町4777番33」の地価は昨年比27.9%上昇しました。これは住宅地では全国一の伸びです。
◯札幌近郊
昨年は住宅地、商業地ともに札幌近郊の地点が上昇率のトップ10を独占しました。
1位はいずれも「北海道ボールパークFビレッジ」を擁する北広島市の地点で、22年比で約30%上昇しました。新球場はもはや北広島市に欠かせないシンボルとなっており、その影響の大きさは高い地価上昇率からも伺えました。
千歳市でも新たなシンボルとなる建物の建設が進んでいます。最先端半導体の製造を目指す「ラピダス」の新工場です。
この地域では建設作業員や関連企業の共同住宅、ホテル、事務所用地の需要が高まっています。
今年の上昇率トップ10のうち、住宅地で4地点、商業地で3地点が千歳市内の地点です。
◯苦境の地方都市
札幌近郊やリゾート周辺の地価は上がっていますが、地方では下落傾向も見られます。
「夕張市本町2丁目217番」の地価は、市の財政破綻が明らかになった06年の公示では1平方メートルあたり14,800円でしたが、現在は3,300円まで落ち込んでいます。
室蘭市も地価の下落が目立つ地域です。「室蘭市祝津町1丁目127番141」の今年の下落率は-2.0%。工業地では全国一の下げ幅です。昨年の公示では、市内の複数の地点が下落率ワースト10に入りました。
太平洋沿岸や内陸の旧産炭地での下落が目立ち、道内でも明暗が分かれています。
地価から読み解く北海道。数字は明暗分かれる道内の現状をありありと映し出しています。
参考紙面:
3月27日付 読売新聞朝刊28面(道総合)「地価公示 富良野で上昇率全国1位 住宅地 10位内に道内7地点」
参考資料:
日経電子版「あなたの街の地価は?上昇・下落マップ2024」(2024年3月27日)