世界に誇る日本アニメ アニメーターの待遇の改善急げ

3月23、24日に東京ビッグサイトで開かれていた「AnimeJapan 2024」。最新のアニメ情報が集まるこのイベントに参加してきました。開場時間である午前9時前後に到着したにも関わらず、会場の前は既に長蛇の列。入場まで1時間待つほどの盛況ぶりでした。来場者は推定で13万人に上ったと言うから驚きです。

そこで改めて印象に残ったのが海外観光客の多さでした。筆者の体感ですが、少なくとも1割以上が海外の方で、コスプレ姿も多く見られました。たった2日間しか開かれないイベント。わざわざこのために来日したファンも少なくないでしょう。日本のアニメが世界中で愛されていることを実感しました。

日本のコンテンツの影響力は、卒業旅行でヨーロッパを訪れた時にも感じました。フランス、ベルギー、イギリスと訪れた国で見かけた本屋の全てに日本の漫画が置いてあったからです。フランス語圏には日本の漫画、アメリカン・コミックス(アメコミ)と並ぶ、バンド・デシネ(B.D.)と呼ばれる独自の漫画があります。B.D.は芸術作品としての側面もあり、刊行ペースの違いなどから単純な比較はできないものの、B.D.を抑えて日本の漫画が平積み(表紙が見える置き方。売れ筋の本がされやすい)になっている書店も多く見られました。

ベルギーにある漫画センターにて。 「タンタンの冒険」など、B.D.作品が多く展示されている一方で、お土産コーナーにあったのは「漫画の描き方の本」だった。

 

ベルサイユ宮殿内部のお土産屋で見つけた、フランス語訳された日本の学習漫画。

■アニメ業界には問題が山積

『推しの子』の世界的なヒット、『君たちはどう生きるか』のアカデミー賞長編アニメーション部門受賞など好調が続く業界ですが、数年前から言われ続けている人手不足や低待遇の問題は未だに解決しないままです。

一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟が今月27日に公開したアンケート調査によると、アニメ制作者の月間労働時間は平均219時間で、一般労働者の平均の3割以上も長く働いていることになります。それでも、アニメーターの43%は月収20万円未満で、時給の中央値は1111円と東京の最低賃金を下回っています。年収1000万円を超えるアニメーターも1割ほど存在するようですが、業界全体で言えば賃金水準に問題があることは明らかです。

一因がアニメ制作会社の収益性の低さにあります。売り上げの多くは出資元であるテレビ局や出版社に渡り、制作会社に入るのは国内売上のうちの16%。海外売上での収益に至ってはわずか6%しかありません。その影響は後進の育成にも及んでおり、日本総研の調査によると、離職率は4年以内では約25%、8年以内では68%と高くなっています。

この悪循環を断ち切るには、アニメ事業のあり方を根本から考え直すような思い切った改革が必要です。文化庁が進めるアニメーター育成事業「あにめのたね」など、行政の力にも期待したいです。

 

■おわりに

アニメの海外人気を実際に体感すると、嬉しく思う一方で、低待遇のままで一段と忙しくなっている制作現場を想像して、歯がゆい思いをすることがあります。こんなにも評価される作品を送り出し、煌びやかに見える業界を支える人々が低待遇で働かされていていいわけがないと思うからです。

それでも、「今後もアニメ業界で働きたいと思いますか」という質問には、71.8%が肯定的な回答をしており、否定的な回答はわずか5.5%でした。アニメーターのやる気に甘え、やりがい搾取を続けていては、業界の今後はありません。世界に誇る日本のアニメを今後も見続けるためには、アニメに関わる全ての企業がアニメーターの待遇改善に取り組むことが不可欠です。

 

☆本記事であらたにすを卒業します。2年間ありがとうございました。

 

参考記事:

・3月27日付 アニメ制作者、平均で月219時間労働 業界団体調査 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

・3月10日付 アカデミー賞2024 注目の日本アニメ、10の数字で読み解く – 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

参考資料:

アニメのすべてが、ここにある。「AnimeJapan 2024」総来場者数は132,557人*! | 一般社団法人アニメジャパンのプレスリリース (prtimes.jp)

第1回 アニメ業界の働き方に関するアンケート 結果レポート | NAFCA 一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟

わが国アニメ産業の現状と課題 (jri.co.jp)

あにめのたね 2024 | 文化庁委託事業 令和4年度 アニメーション人材育成調査研究事業 – (animenotane.jp)