「ようこそ」と、迎えることはできますか?

トルコ国内を旅行していたとき、ある土産物屋さんでシリアから来た高校生ぐらいと見られる青年に会いました。家族をのこして祖国を離れた後、堪能な英語を活かし、土産物屋で働いて生計を立てていると言っていました。「早くシリアに帰りたいけどね」。苦笑しながらそう語る姿を、今でも覚えています。内戦により、未来ある若者の「学ぶ機会」が奪われているのだと、実感しました。

これまで、難民認定基準が他の主要国と比べて厳しいとされてきた日本。しかし、来年からは「変化」がありそうです。今朝の朝日新聞によると、政府は中東の難民支援策の一環として、内戦が続くシリアの難民のうち、留学生として2017年から5年間で最大150人の若者を受け入れることを決めました。

日本政府の関係者によると、受け入れ対象は内戦や過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭により就学機会を奪われたシリアの若者たちだそうです。国際協力機構(JICA)による技術協力制度を活用し、1年当たり20人を受け入れます。すでに文部科学省が実施している国費外国人留学生制度も1年当たり5人の枠を10人まで拡大し、合わせて5年間で150人を受け入れる方針です。

今回の政策は、26、27日に開催される主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で難民対策が主要課題の一つとなることから、日本政府の積極姿勢を示すために打ち出すものとみられています。

とはいえ、「5年間で最大150人」。多いのでしょうか、少ないのでしょうか。期間と受け入れ人数の制約はありますが、いずれは「長期的な」政策につながることを願います。また、今回は「シリア難民」の受け入れ枠の拡大ですが、難民問題はシリアだけが抱えているわけではありません。まずはシリアから。いつかは「シリアだけではない」難民問題の解決の一助となればと考えます。

欧州でも問題があったように、難民の受け入れについては、受け入れる側の対立も衝突しかねません。私たち、とりわけ学生の「心の準備」はどうでしょうか。さまざまな意見があるのは当然ですが、一人でも多くの人が寛容な心を持つことが大切だと思います。

「ようこそ」と言えますか。「来ないで」と言えますか。――これは、2月21日付けの『朝日新聞GLOBE』の見出しです。いま、この言葉を読者の皆さん、特に学生の皆さんに投げかけたいです。

 

参考記事:

19日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面(総合)『シリア難民受け入れ 来年から5年間 留学生最大150人』

 

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2月21日付 『朝日新聞GLOBE』 難民特集