新型コロナの位置づけが「5類感染症」に移行されてから10ヶ月が経とうとしています。以前の生活を取り戻してきているように感じているのではないでしょうか。マスク生活も終わり、飲み会が当たり前のように開かれるようになりました。
しかし、新型コロナの影響を引きずっている産業が多くあります。その1つが飲食店です。原材料費の高騰による打撃も大きいですが、いま人手不足に苦しめられています。
新型コロナが蔓延し始めてから、人件費を抑えるための解雇が相次ぎました。感染が終息しつつある今、店に客は戻ってきていますが、従業員は戻ってきません。2022年度の帝国データバンクの調査によると、人手不足感のある企業の割合は5割を超えています。その中でも飲食店の従業員数はコロナ禍の前に比べて約6割も減少しています。「次また解雇されるかもしれない」。そんな不安や不信から飲食業で働こうとしない人が増えたのではないでしょうか。
週休2日制にしたことでコロナ前のように売上を伸ばしている飲食店がテレビで紹介されていました。首都圏を中心に飲食店や物販店を展開している「うかい」(東京都八王子市)です。2022年から2日間の定休日を設ける週休2日制に踏み切りました。営業日には従業員全員が働き、万全の状態でおもてなしをすることができるため、売上も利益も確保できました。商業施設新聞によると、社長の紺野俊也氏は「働く環境を整えることで従業員のQOL向上と人材確保につながると期待する」と話しています。
ドイツでは金属加工会社の「ダーブCNCテクニック社」が一昨年10月から金曜日を休みにし、週休3日制を導入したそうです。導入の理由の1つが、勤務日数を減らすことで会社の魅力を高め、人手不足を解消することだったと言います。導入後は、従業員のモチベーションも売上も上がりました。
日本生産性本部によると、21年の就業1時間あたりに生み出す付加価値を示す労働生産性で、ドイツは日本に比べ約6割も高い水準にあります。人口も労働時間も日本より少ない国がはるかに高い労働生産性を維持している秘訣は、働き方改革にあるのではないでしょうか。それだけに「うかい」の取り組みはきわめて注目されます。
外食ムードが復活しても人手不足を解消しないとコロナ禍からの本格的な回復は見込めないでしょう。苦境を乗り越えるためにも労働条件の改善が欠かせません。労働時間を減らして従業員の意欲を高め、従業員側も企業側も利益を受けられるような働き方に変えていく必要があるのではないでしょうか。
参考記事:
・2月20日付、朝日新聞デジタル、(けいざい+)GDP逆転、ドイツを歩く:上 週休3日、人材確保し生産性アップ
・2023年11月12日、日本経済新聞、「給料減らない週休3日」広がる 新たな働き方に関心
・2023年5月9日付、朝日新聞デジタル、宴会需要再び、期待 人手不足で予約に影響も コロナ5類
・2023年3月8日付、読売新聞オンライン、飲食業界の人手不足が深刻化、確保に向けて採用に力…待遇、福利厚生アピール
・2020年7月19日付、朝日新聞デジタル、どうなるコロナ後の飲食業 「都心の居酒屋が厳しい」
・2023年5月30日付、商業施設新聞2497号、おもてなし提供で高単価維持 複数業態の“合体”を構想
参考文献:
・2023年7月14日付、帝国データバンク、特別企画:企業の「正社員・アルバイト」従業員数動向調査