2025年の4月から、大阪の夢洲で開催される予定の大阪万博。開催まで1年半ほどとまだ時間があるにも関わらず、IRとの関連性や海外パビリオンの建設計画遅れ、かさみ続ける関連費用など、毎日のように新たな問題が取り上げられています。
その中でも特に筆者が問題意識を持っているのが、万博が赤字になった際の対応についてです。
上記の図は朝日新聞がまとめた万博費用の全体像です。当初の2倍近く膨らんだ会場建設費や新たな国費負担となる837億円など、現時点でかさんだ経費が反映されています。左上に示された運営費も例外ではなく、安倍元首相の銃撃事件等を受けて強化した警備費用などにより、当初の予算に比べ4割ほど膨らんだ1160億円と試算されました。負担先が決まっている建設費とは異なり、運営費の大半はチケット収入で賄う予定で、赤字になる可能性があります。
運営費で損失が出た場合どうするのか。この問題について当時の西村経済産業大臣、そして吉村洋文知事は共に、赤字を補填する気はないと明言しています。責任を博覧会協会に押し付けている形です。その発言を受け協会側は「赤字にならないように努力する」と述べているのみ。これでは全く答えになっていません。
浮き彫りになったのは、東京五輪に続く「責任者不在」の運営体制です。万博のような国際的なイベントでは、オリンピックと同様に行政も責任を持つべきです。都合の悪いことは責任を転嫁するというのはいかがなものでしょう。
肝心のチケット販売の雲行きも怪しくなっています。万博チケットの基本料金は7500円で想定入場者数は2820万人としていますが、販売数は2023年12月13日現在で13万枚ほど。ほとんどの展示の詳細がまだ公表されていないことを踏まえても、状況は芳しくないと言えるでしょう。読売新聞の調査によると、万博に行ってみたいと答えた人は3割ほどに留まっており、関心の薄さが伺えます。
連日の万博報道を見ていると、改めて開催ありきで話が進んできたのだという印象を持ちます。外堀ばかりが埋められていき、その中身がないがしろにされてきたからこそ、ここに来て数々の問題が噴出しているのでしょう。その様子は、赤字を誰が負担するのかで大いに揉めた東京五輪を思い出させます。このままでは万博を中止するべきという声も大きくなるのではないでしょうか。
オリンピックの二の舞を演じないためにも、まずは国と大阪府・市、博覧会協会それぞれが役割を明確にし、責任の所在をはっきりとすることが不可欠です。
参考紙面:
・12月17日付 万博、国費負担1647億円 イベント費、追加見込み:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・12月14日付 万博、赤字になったら? 会見で質問集中 運営費1160億円と発表:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・11月19日付 大阪万博「行ってみたい」30%、会場建設費の倍増に「納得できない」69%…読売世論調査 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
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