関東「オモロー授業発表会」200人来場 教育界に繋がりを

11月23日、港区立小中一貫教育校お台場学園。勤労感謝の祝日に、200人を超える人が体育館に集まっていました。第1回「関東オモロー授業発表会」です。

壁に立てかけてあるパイプ椅子を各々が持ち出し、好きな場所で座ります。体育館中央にはマットが敷いてあり、お子様たちも多数。子どもらしい「きゃっきゃ」という声、はしゃいで走り回る姿も見られる中、スーツ姿の大人たちが前方でプレゼンを始めました。

登壇しているのは、公立小、中学校の教員8人。それぞれが、自分の思い描く教育観、それに基づいた授業実践を7分間で伝えます。ICTやトランプ型のカードを活用し、子どもも大人もウェルビーイング※を大切にすることを目指す教員。オリジナルの教材で、より自分ごとに引きつけた考える道徳を実践する教員。1年間で150号まで学級通信を出すと宣言し、さらに40人の子どもたちと毎日交換日記をすることによってコミュニケーションを図る教員。

※ウェルビーイング:健康、幸福、福祉などに直訳される。「満たされた状態が持続する」「ひとりひとりが尊重され自己実現していく」などのニュアンスが含まれる。

子どもの「ディズニーランドを作りたい!」という希望を受け入れ、子どもたちと段ボールなどでオリジナルテーマパークを作った方もいました。体育のマット運動の授業で自由進度学習を取り入れ、3週間で学年の8割が宙返りできるようになったという型破りな実践をする方も。タブレット端末で成長の過程を子ども自身が撮影しあったそうです。彼は、自分の気持ちを表現するのが苦手な生徒に、AIを駆使して小説を書くことを提案し、実現もしています。生徒の「自己肯定感」をアンケート調査によって数値化し、高校の学級経営で56%から96%まで上げた、という方は、現在休職して大学院に通いながら、このようなイベント運営をはじめ様々な活動をしているそう。

▲「子どもたちの『やりたい!』にとことん付き合う」という想いからの授業実践を紙芝居形式で紹介した光田拓矢氏。子どもたちも見入る。

▲子どもたちと「アンコンシャスバイアス」を考える、お台場学園副校長の茂木正浩氏。プロジェクターで映されているのは、お好み焼きではなく甘いお菓子だ。

それぞれ、普段から教育関係者のコミュニティを運営したり、別地区で同様の講演会を開催したり、書籍を出版したりもしているそうです。元々「オモロー授業」は関西で始まった取り組みでしたが、関東でもそのムーブメントを起こそうと、人が人を呼び、あっという間に登壇者が集まったのです。

聴衆も、教員は3分の1以下で、実に様々な人がいました。社会福祉団体を運営している家族。不登校の我が子に合う教育環境を、全国、全世界から探し続ける保護者。若手の教員を応援したいと意気込む元校長先生。教育委員会の職員。公立学校を卒業した高校生。小児科医を営む医師。海外のサッカーチームで活躍し、教育にも興味を持つ24歳。オルタナティブスクールの職員。政治や教育に関心のある関西の大学生。大学を卒業したばかりの新米教員……

今の公教育に課題意識を持ち、自分なりにできることを探す人。教育に興味があったからとりあえず参加してみた人。立場はそれぞれでしたが、「こんな先生もいるんだ」「新鮮だった」との感想が多く聞かれました。

▲イベント内では、聴衆同士で感想や意見を交わす時間も。ここで新たな繋がりを見出した人も多いようだった。

会が終わるとお昼時。すぐそばのお台場海浜公園でブルーシートを敷き、おにぎりを片手に、多くの人が二次会に参加し始めました。今日出会ったばかりの人同士、聴き手と登壇者が、保護者同士が、輪になって話します。それぞれが抱える悩み、描く理想の未来を共有し、連絡先を交換していました。

今回のような場が、現役の教員にまだまだ知られていないこと、他者の授業実践を知ったり真似たりするほどの余裕がないことをはじめ、教育現場の抱える課題はまだまだ数えきれないほどあります。登壇した方々も「閉鎖的」「新しいことを嫌う」「カタい」なんて言われがちな現場で、壁にぶつかったことがあったかもしれません。けれど、それではいけないと大きな波を起こそうとしている人たちもいました。横のつながり、地域を超えた実践例の発信、目の前の子どもたちを大事に、現状を打開しようと行動している人たちは、思っていたよりたくさんいました。

一度足を運んでみれば、意外と同じ思いを持つ仲間に出会えるかもしれません。たとえ共感できなかったとしても、教育界を、社会を動かそうとしている人たちはこんな人たちなのか、と知るところから始めてみるのも良いでしょう。今後は関東、大阪だけでなく、名古屋でも予定しているそうです。同じ課題を抱えた人たち同士が集まれるようなコミュニティや講演会を。まずはSNSなどで検索してみてはいかがでしょうか。