秋も終わりに近づいてきました。前半は例年よりも暑い日が続き、夏日を記録した地域も。ようやく秋らしくなったかと思えば、急激に冷え込みました。不安定な天候が続いている今年の秋ですが、新米の季節を楽しみにしている方も多いと思います。そんな米の一大生産地、新潟では異変が起きています。
「農水省の13日の発表によると、県内の10アールあたりの予想収量は9月25日時点で512キロで、前年より32キロ少ない。このため、主食用の作付面積は前年より700ヘクタール増えるものの、収穫量は2万8400トン減の51万5100トンになる見通しという」(「コメ作況指数、全国最低「95」「やや不良」5年ぶり低水準」2023年10月17日『朝日新聞』)
穂が出てから約20日間の平均気温が26~27度以上になると、米粒が白く濁る「白未熟粒」の割合が増え、コメの品質や価格に影響が出るそうです。
「県内最大級のJA新潟かがやき(新潟市)によると、23年産コシヒカリの品質検査の現状は9月19日時点で1等米が0.3%、2等米が31.6%、3等米が67.3%だという。22年産の等級比率がそれぞれ81.8%、17.7%、0.3%だったことから、23年産の1等級が極端に少ない状況になっているのが分かる。」(「新潟の1等米比率0.3% コシヒカリ、19日時点 「新之助」、出荷量確保に危惧 特例判断求める声も」(2023年9月29日『日本経済新聞』)
今年の新潟では、1等米の割合が激減。等級が下がれば取引価格も下がります。生産者の収入は減少するため、決して無視できない問題です。
ただ、米の等級は粒のそろい方や光沢など見た目で決まるもので、食味には大きな影響はないそうです。
日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、「この商品には、白く見える米粒(乳白粒)が例年より多く見られますが、夏場の天候不順(高温等)により発生するものです。新米切り替え時に検査を行い、品質及び食味に問題がないことを確認しています」と記載したシールを袋に貼って販売を始めました。
ECサイトを運営する株式会社食文化(東京都中央区)は販売方法を工夫して新潟米の消費拡大を狙っています。米穀卸・小売販売の田中米穀(新潟県長岡市)が1等米から3等米をブレンドし、食文化の「豊洲市場ドットコム」で販売を開始したのです
猛暑による影響は、米だけではありません。
「農水省が3日に発表した食品価格動向調査(9月25日~27日、全国平均)によると、1キロ・グラム当たりの小売価格(税込み)はニンジンで平年より47%高い635円になるなど高値となった。」(2023年10月9日『読売新聞』)
猛暑による栽培環境の変化は、農家の方々だけではなく、我々の暮らしにも大きな影響を与えていることがわかります。
そんな中、新潟大学の三ツ井敏明農学部教授が、高温に強い特性を持った「コシヒカリ新潟大学NU1号」を開発し、品種登録されました。今年9月28日には「新大(しんだい)コシヒカリ」という名称で販売が始まりました。遺伝子組み換えや他品種との交配はせず、もともとのコシヒカリから選別を繰り返すことで実現した品種であるため、コシヒカリのおいしさを従来通りに味わうことができるそうです。
新潟のお米と言えば、コシヒカリ。そんなイメージを維持しつつ、生産を続けることができる意義は大きいはずです。急速に変化する気候に対して、粘り強く適応する農家の方々、品種改良に取り組む研究者の方々に感謝しながら、今日もおいしいお米をいただきます。
参考記事
2023年10月26日『朝日新聞』「猛暑、1等米が急減 同じ味でも価格に差、減収懸念」
2023年10月4日『朝日新聞』「日本一の米どころ「三重苦」「コシヒカリ至上主義」脱却課題」
2023年9月29日 『朝日新聞』「コメの名は「新大コシヒカリ」 新潟大開発、来月7日発売」
2023年9月29日『日本経済新聞』「新潟の1等米比率0.3% コシヒカリ、19日時点「新之助」、出荷量確保に危惧 特例判断求める声も」
2023年9月28日『日本経済新聞』「新潟大発新品種の名称 「新大コシヒカリ」に 来月から販売」
2023年10月9日『読売新聞』記録的猛暑で「1等米」激減、農家「こんな年は初めてだ」…野菜の高騰も続く
2023年9月30日『日本農業新聞』「新米に猛暑の影響も… 産地応援や食べ方工夫提案」